所帯

ここで買うのは、お肉と卵だけですよ。
セナが手にしたメモを見ながら、宣言する。
ヒル魔は肩を竦めて、その後に従った。

一緒に暮らし始めたヒル魔とセナは、世間の同棲カップルが最初に経験する壁に直面していた。
いわゆる生活スタイルの違い。
暮らし始めてみて「こんなはずではなかった」と別れるカップルは多いらしい。

デスマーチやら、合宿やら、文字通り寝食を共にしたセナ。
親とさえ離れて暮らすヒル魔が、初めて生活を共にしたいと思った相手。
ヒル魔はセナに関しては、何もかも知り尽くしていると思っていた。
だが実際一緒に暮らしてみて、今更ながらにセナの新たな一面を知ることになった。

ごく普通の両親、普通の家庭で生まれ育った少年。
苦労知らずでおっとりとしていると思っていた。
だがセナは、何ともしっかりしているというか、がっちりしていた。

2人で暮らす部屋から徒歩で行ける範囲で行けるところで、生活必需品を購入する店はすべてチェック済み。
あれはこっちの店の方が安いとか、それはスーパーで何曜日に特売だとか。
先日ヒル魔がコンビニでシャンプーを買ったときには、ドラックストアで詰替え用を買うのだと怒られた。
電気やエアコンを付けっぱなしにしておくと、さっさと切ってしまう。
今日は洗濯物を乾燥機に入れようとしたら、こんなに天気がいいのにもったいないとため息をつく。
そしてヒル魔の手から洗濯物を取り上げ、ベランダに干し始めた。
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