おいしいごはん

玄関のドアが確かに開く音がしたが、訪問者はなかなか部屋に入ってこない。
またか。ヒル魔は嫌な予感がして、急いで玄関に向かう。
案の定、予感的中だ。
セナが両手に大きな荷物を抱えて、靴を脱ぐのに悪戦苦闘していた。

セナが2度目のクリスマスボウルを終えた。
部を引退したセナは頻繁にヒル魔宅に泊まりにくるようになった。
それまでも泊まりにくることはあったが、いつも時間に余裕がなかった。
何時から練習だとか、何日後に試合だとか。
忙しい日程の合間を縫って、会うだけで精一杯だった。
セナがヒル魔の部屋での滞在を楽しむようになったのは、最近のことだ。

ヒル魔の部屋には、セナの私物が増えていく。
当初は着替えと歯ブラシしか置いていなかったのに。
マグカップから始まって、ゲームソフトにクッション、DVD、抱き枕、等々。
モノによっては、ヒル魔さんとお揃いです~♪と2つ持ってくる。
つい数日前には、これから寒くなりますからと半纏のようなものを持ってきた。
俗に言う「ちゃんちゃんこ」というヤツだ。
自分用の赤いものと、ご丁寧にヒル魔用に同じ柄の黒いもの。
綿がたっぷり入っていてかさばる2着の「ちゃんちゃんこ」を両手に抱えて、持ってきた。
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