Encirclement

私がクリスマスボウルの試合を見に行ったのは、単なる偶然だった。
スポーツなんて興味ないもん。自分から見に行くわけない。
うちの学校のアメフト部が出場するから応援に行こうと誘われた。
それでたまたまその日は空いていた。それだけ。

アイシールド21、小早川セナ。
彼のことは名前と顔ぐらいは何となく知っていた。
アイシールド21という選手登録名だけは有名で、その正体については謎。
その彼が正体を明かしたときには、かなり話題になっていたから。
そのとき「ふ~ん」と思ったけど。それだけだった。

アメフトのルールもよく知らない私は試合展開なんて全然わからなかった。
あとタッチダウン何回で追いつくとか何とか周りが騒いでるけど、どうでもいい。
私はいつの間にかフィールドで走る彼だけを見ていた。
最後にはボールの行方すら無視して、彼を目で追っていた。
彼はスタジアムを、そして私を魅了した。

簡単なことだ。私は恋に落ちてしまったのだ。
試合は結局うちの高校が勝ったらしい。それはすごい快挙らしい。
でもそれすらもどうでもよかった。
私は帰り道、本屋に駆け込んで彼の記事が載っているアメフト雑誌を買い込んだ。

セナくんのこと、好きになったんでしょう?
一緒に見に行ったクラスメートである親友が悪戯っぽく笑った。
そんな、と誤魔化そうとしたけど、やっぱり隠せてなかったみたい。
いいわ、私に任せて。ニッコリと笑う彼女に私は曖昧に笑った。
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