What color?
「ブホ!ブハハハ!」
ヒル魔が腹を抱えて、盛大に笑う。
普段の不敵な笑みではなく素の爆笑に、セナは肩を落とした。
遡ること10分前。
セナはスマホアプリで、自分の写真を加工していた。
最適な色を見極めるためだ。
だけど「ああでもない、こうでもない」と呻くセナを、見逃すはずはない。
ヒル魔は背後から気配もなく近づき「何してやがる?」と囁く。
セナは驚き「うひゃあ」と声を上げて、ソファから転げ落ちた。
「ビックリさせないでくださいよ!」
「別に勝手に驚いただけだろ。で、何してる?」
「実は、髪を染めたいと思いまして」
「何だ、遅れてきた不良か?」
「髪を染めるのが不良とかいつの時代の話です?っていうかヒル魔さんが言います?」
セナが不満そうに口を尖らせるのを見て、ヒル魔が笑っている。
だけどアラサーにしてそんな子供っぽい仕草をするセナだから「不良か?」と言いたくなるのだ。
セナの髪はひどいクセ毛なのだが、割りと無頓着だ。
洗ったらドライヤーもかけず、軽くブラシして放置。
ピンピン撥ねていたってお構いなしだったりする。
何ならファンは「今日はどんな感じのクセになってる?」とネタにするほどなのだ。
そんなセナが髪を染めるなんて、どういう風の吹き回しか?
「まずは茶色が無難なんですかね?金だとダサいヤンキーのなりそうですし」
「は?」
「いっそチームカラーにしちゃって、笑いを取る方向に走ろうかな?」
「とりあえず見せてみろ」
ヒル魔にやや脅し気味に言われたセナは、スマホを差し出した。
写真加工アプリで髪色を変えたセナの画像が映し出されている。
ちなみに今はかつてのデビルバッツの色、赤髪だ。
ヒル魔はそれを見て、大爆笑したのだった。
「似合わねぇな」
「ですよね~」
セナは赤髪の自分を見て、力なく笑った。
ヒル魔みたいに彫りが深い顔立ちなら、金だって何だって似合うだろう。
だけどのっぺり純和風、しかも地味という自覚があるセナは「不公平だなぁ」と呻いた。
「そもそもヒル魔さんは何で金にしてたんですか?」
「相手をビビらすため。阿含や十文字もそうだと思う。」
セナはわかりやすい理由に「なるほど」と頷いた。
確かにヒル魔は確かに高校時代、そんなことを言っていた気がする。
考え込むセナに今度はヒル魔から質問が飛んだ。
「何で今さら髪を染めるなんて言い出したんだ?」
「実は白髪が増えて」
「増えた、だぁ?」
ヒル魔が驚き呆れているが、セナには切実な問題だった。
白髪を初めて見つけたのは、2年ほど前だ。
1つも同じ場所に1本あり、見つけたら抜いていた。
だが今朝2本目を見つけ、愕然としたのだ。
白髪が増えてる!このままだともっと増える!
そこから「染めなきゃ」となり、何色にしようかとアプリを使ったのだった。
「わかった。白髪は毎日俺がチェックして、切ってやる。」
「切る?抜くんじゃなくて?」
「抜いたら毛根が痛むだろ?」
「そうなんですか?」
セナは「まぁそれなら」と染めるのをやめることにした。
そもそもどの色も似合いそうもないし、途方に暮れていたのだ。
ヒル魔にケアしてもらえるなら、万々歳だ。
「ヒル魔さんはどんな色も似合っていいですね~」
アプリを閉じて、スマホをポケットに落としたセナは苦笑する。
ヒル魔は「ケケケ」と笑い、ドヤ顔でセナを見た。
ヒル魔が腹を抱えて、盛大に笑う。
普段の不敵な笑みではなく素の爆笑に、セナは肩を落とした。
遡ること10分前。
セナはスマホアプリで、自分の写真を加工していた。
最適な色を見極めるためだ。
だけど「ああでもない、こうでもない」と呻くセナを、見逃すはずはない。
ヒル魔は背後から気配もなく近づき「何してやがる?」と囁く。
セナは驚き「うひゃあ」と声を上げて、ソファから転げ落ちた。
「ビックリさせないでくださいよ!」
「別に勝手に驚いただけだろ。で、何してる?」
「実は、髪を染めたいと思いまして」
「何だ、遅れてきた不良か?」
「髪を染めるのが不良とかいつの時代の話です?っていうかヒル魔さんが言います?」
セナが不満そうに口を尖らせるのを見て、ヒル魔が笑っている。
だけどアラサーにしてそんな子供っぽい仕草をするセナだから「不良か?」と言いたくなるのだ。
セナの髪はひどいクセ毛なのだが、割りと無頓着だ。
洗ったらドライヤーもかけず、軽くブラシして放置。
ピンピン撥ねていたってお構いなしだったりする。
何ならファンは「今日はどんな感じのクセになってる?」とネタにするほどなのだ。
そんなセナが髪を染めるなんて、どういう風の吹き回しか?
「まずは茶色が無難なんですかね?金だとダサいヤンキーのなりそうですし」
「は?」
「いっそチームカラーにしちゃって、笑いを取る方向に走ろうかな?」
「とりあえず見せてみろ」
ヒル魔にやや脅し気味に言われたセナは、スマホを差し出した。
写真加工アプリで髪色を変えたセナの画像が映し出されている。
ちなみに今はかつてのデビルバッツの色、赤髪だ。
ヒル魔はそれを見て、大爆笑したのだった。
「似合わねぇな」
「ですよね~」
セナは赤髪の自分を見て、力なく笑った。
ヒル魔みたいに彫りが深い顔立ちなら、金だって何だって似合うだろう。
だけどのっぺり純和風、しかも地味という自覚があるセナは「不公平だなぁ」と呻いた。
「そもそもヒル魔さんは何で金にしてたんですか?」
「相手をビビらすため。阿含や十文字もそうだと思う。」
セナはわかりやすい理由に「なるほど」と頷いた。
確かにヒル魔は確かに高校時代、そんなことを言っていた気がする。
考え込むセナに今度はヒル魔から質問が飛んだ。
「何で今さら髪を染めるなんて言い出したんだ?」
「実は白髪が増えて」
「増えた、だぁ?」
ヒル魔が驚き呆れているが、セナには切実な問題だった。
白髪を初めて見つけたのは、2年ほど前だ。
1つも同じ場所に1本あり、見つけたら抜いていた。
だが今朝2本目を見つけ、愕然としたのだ。
白髪が増えてる!このままだともっと増える!
そこから「染めなきゃ」となり、何色にしようかとアプリを使ったのだった。
「わかった。白髪は毎日俺がチェックして、切ってやる。」
「切る?抜くんじゃなくて?」
「抜いたら毛根が痛むだろ?」
「そうなんですか?」
セナは「まぁそれなら」と染めるのをやめることにした。
そもそもどの色も似合いそうもないし、途方に暮れていたのだ。
ヒル魔にケアしてもらえるなら、万々歳だ。
「ヒル魔さんはどんな色も似合っていいですね~」
アプリを閉じて、スマホをポケットに落としたセナは苦笑する。
ヒル魔は「ケケケ」と笑い、ドヤ顔でセナを見た。
1/2ページ