悪役令嬢、果たしてどうなる?
俺が貴族の娘。
しかも悪役令嬢ってどういうことだ?
大丈夫ですか?ペルラネラ様。
眩暈を感じ、足元がフラついたところで声をかけられた。
俺は「ええ」と慎ましやかに微笑しながら、内心は激しく動揺していた。
だってそうだろ?
俺は確かに日本の出版社で働いていた。
なのに今は中世ヨーロッパ風の屋敷の中をドレスの裾を揺らしながら歩いているのだから。
エスメラルダ王国。
俺はこの国の由緒ある貴族の娘だ。
貴族や裕福な商人の子供たちが集う学校に通っている。
茶色や金色などの髪や瞳が多いこの国では珍しい黒髪、黒い瞳。
自分で言うのも何だが、ミステリアスな美人で通っている。
そして俺には、好きな相手がいた。
何とこの国の第一王子だ。
夢は愛を育み、ゆくゆくは結婚して、2人でこの国を支えていくこと。
そんな幸せなお嬢様ライフの最中、それは起こった。
普通に歩いていたとき、唐突に記憶がなだれ込んできたのだ。
俺は日本の東京で、出版社に勤務する会社員だった。
だけどある日、あと1週間で地球に隕石が衝突して滅亡するってニュースが流れた。
俺は愛する人と残りの日々を穏やかに過ごし、地球と共に砕け散ったはずだった。
これって前世の記憶ってヤツだよな。
しかも何の疑問も持たずに普通に過ごしていたこの世界での記憶もちゃんとある。
あれ?こんな話、ライトノベルとか少女漫画であった気がするぞ。
死んでしまった後、乙女ゲームの世界に転生。
確か悪役令嬢が何とかってヤツ。
ヒロインの敵役の悪役令嬢が国外追放されるんだよな。
俺は読んでいなかったけれど、ざっくりとしたあらすじは聞いた気がする。
悪役令嬢と言えば、今の俺にも思い当たる女がいる。
事あるごとに第一王子に付きまとい、俺を目の敵にしているんだ。
ちなみにそいつも父親が有力貴族。
取り巻きの他の令嬢たちとチクチクネチネチ、嫌がらせを仕掛けてくるんだ。
まぁ、俺は相手にしてないけどな。
第一王子は聡明な方、悪役令嬢の小細工が通じる相手じゃないだろうし。
とはいえ、前世の記憶が戻った俺の生活は変わらなかった。
せいぜい「悪役令嬢が何とか」を読んでおけばよかったと思うだけだ。
もしも物語の通りに話が進むなら、先の展開が読める。
そうなればこの先の人生、いろいろやりやすいだろうからな。
そんなある日のことだった。
学校は休みで、俺は屋敷の自分の部屋で本を読んでいた。
いずれこの国の王女になるなら、勉強は必須だ。
知識はいくらあったって、多すぎることはないからな。
だがにわかに部屋の外が騒がしくなった。
使用人たちが「おやめください」「困ります」などと叫んでいる。
さすがに集中できなくなった俺は、本を閉じた。
そしてドアが開き、許可もなく部屋に入って来た男たちを睨みつけた。
いったい何事です?
あたくしが誰だか知っていての、無礼ですか?
凛とした声が部屋に響く。
あ、ちなみに俺は普段はちゃんと令嬢言葉で喋っているからな。
この独白は前世バージョンでやってるだけだ。
今の俺は、ゆくゆくは王女となる貴族令嬢。
言葉遣いも、声のトーンも完璧だ。
よくわかっております。
ですがペルラネラ様には、未来の王妃様を侮辱した嫌疑がかかっておりますので。
部屋に入って来た数名の男のうち、1人が1歩前に進み出てそう言った。
そして男たちの後ろには、若い男女がいた。
第一王子と、俺に再三嫌がらせを仕掛けてきた女。
2人がまるで恋人同士のように寄り添う姿を見て、俺は悟った。
この物語、俺こそ悪役令嬢なのだ。
そして今、追放の儀式が始まろうとしている。
マジで本を読んでおくんだった。
せめて目の前で読んでいた日和に、話を聞いておけばよかった。
だけどもう悪あがきしても仕方ない。
とりあえず命が取られないことを祈ろう。
俺は覚悟を決めて、もう1度俺を追放しようとしている2人を見る。
だが女を改めてマジマジと見て「あれ?」と首を傾げた。
サラサラとした茶色の髪と緑色の瞳。
あんなヤツを俺は見たことがある。
前世の日本、エメラルド編集部にいた小野寺律だ。
似ている。俺を睨みつけている目付きとかそっくりだ。
まさかあいつもこの世界に転生して来たのか。
だがそれを問う機会も与えられず、俺は連行された。
転生先で、更なる転機。
ペルラネラこと横澤隆史の、第二ならぬ第三の人生の始まりだった。
*ペルラネラは黒真珠って意味だそうです。
しかも悪役令嬢ってどういうことだ?
大丈夫ですか?ペルラネラ様。
眩暈を感じ、足元がフラついたところで声をかけられた。
俺は「ええ」と慎ましやかに微笑しながら、内心は激しく動揺していた。
だってそうだろ?
俺は確かに日本の出版社で働いていた。
なのに今は中世ヨーロッパ風の屋敷の中をドレスの裾を揺らしながら歩いているのだから。
エスメラルダ王国。
俺はこの国の由緒ある貴族の娘だ。
貴族や裕福な商人の子供たちが集う学校に通っている。
茶色や金色などの髪や瞳が多いこの国では珍しい黒髪、黒い瞳。
自分で言うのも何だが、ミステリアスな美人で通っている。
そして俺には、好きな相手がいた。
何とこの国の第一王子だ。
夢は愛を育み、ゆくゆくは結婚して、2人でこの国を支えていくこと。
そんな幸せなお嬢様ライフの最中、それは起こった。
普通に歩いていたとき、唐突に記憶がなだれ込んできたのだ。
俺は日本の東京で、出版社に勤務する会社員だった。
だけどある日、あと1週間で地球に隕石が衝突して滅亡するってニュースが流れた。
俺は愛する人と残りの日々を穏やかに過ごし、地球と共に砕け散ったはずだった。
これって前世の記憶ってヤツだよな。
しかも何の疑問も持たずに普通に過ごしていたこの世界での記憶もちゃんとある。
あれ?こんな話、ライトノベルとか少女漫画であった気がするぞ。
死んでしまった後、乙女ゲームの世界に転生。
確か悪役令嬢が何とかってヤツ。
ヒロインの敵役の悪役令嬢が国外追放されるんだよな。
俺は読んでいなかったけれど、ざっくりとしたあらすじは聞いた気がする。
悪役令嬢と言えば、今の俺にも思い当たる女がいる。
事あるごとに第一王子に付きまとい、俺を目の敵にしているんだ。
ちなみにそいつも父親が有力貴族。
取り巻きの他の令嬢たちとチクチクネチネチ、嫌がらせを仕掛けてくるんだ。
まぁ、俺は相手にしてないけどな。
第一王子は聡明な方、悪役令嬢の小細工が通じる相手じゃないだろうし。
とはいえ、前世の記憶が戻った俺の生活は変わらなかった。
せいぜい「悪役令嬢が何とか」を読んでおけばよかったと思うだけだ。
もしも物語の通りに話が進むなら、先の展開が読める。
そうなればこの先の人生、いろいろやりやすいだろうからな。
そんなある日のことだった。
学校は休みで、俺は屋敷の自分の部屋で本を読んでいた。
いずれこの国の王女になるなら、勉強は必須だ。
知識はいくらあったって、多すぎることはないからな。
だがにわかに部屋の外が騒がしくなった。
使用人たちが「おやめください」「困ります」などと叫んでいる。
さすがに集中できなくなった俺は、本を閉じた。
そしてドアが開き、許可もなく部屋に入って来た男たちを睨みつけた。
いったい何事です?
あたくしが誰だか知っていての、無礼ですか?
凛とした声が部屋に響く。
あ、ちなみに俺は普段はちゃんと令嬢言葉で喋っているからな。
この独白は前世バージョンでやってるだけだ。
今の俺は、ゆくゆくは王女となる貴族令嬢。
言葉遣いも、声のトーンも完璧だ。
よくわかっております。
ですがペルラネラ様には、未来の王妃様を侮辱した嫌疑がかかっておりますので。
部屋に入って来た数名の男のうち、1人が1歩前に進み出てそう言った。
そして男たちの後ろには、若い男女がいた。
第一王子と、俺に再三嫌がらせを仕掛けてきた女。
2人がまるで恋人同士のように寄り添う姿を見て、俺は悟った。
この物語、俺こそ悪役令嬢なのだ。
そして今、追放の儀式が始まろうとしている。
マジで本を読んでおくんだった。
せめて目の前で読んでいた日和に、話を聞いておけばよかった。
だけどもう悪あがきしても仕方ない。
とりあえず命が取られないことを祈ろう。
俺は覚悟を決めて、もう1度俺を追放しようとしている2人を見る。
だが女を改めてマジマジと見て「あれ?」と首を傾げた。
サラサラとした茶色の髪と緑色の瞳。
あんなヤツを俺は見たことがある。
前世の日本、エメラルド編集部にいた小野寺律だ。
似ている。俺を睨みつけている目付きとかそっくりだ。
まさかあいつもこの世界に転生して来たのか。
だがそれを問う機会も与えられず、俺は連行された。
転生先で、更なる転機。
ペルラネラこと横澤隆史の、第二ならぬ第三の人生の始まりだった。
*ペルラネラは黒真珠って意味だそうです。
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