梅雨空のサンタクロース
俺ってどうしてこうなんだろう?
最愛の恋人はガックリと肩を落として、項垂れる。
だけど羽鳥は「気にするな」とその頭にそっと手を置き、なでた。
羽鳥芳雪は今日もピザの配達員のアルバイトに勤しんでいた。
梅雨時は注文が多い。
理由は簡単、雨の日の外出はめんどくさいからだ。
しかも今年は異常気象というのか、いきなり雨が降り出したり、強風の日が多い。
だからいつになく忙しい日が続いていた。
店長にしばらくシフトを増やして欲しいと頼まれたときは、快諾した。
もうすぐ夏休み、恋人と旅行にでも行きたいと思っていたからだ。
だがそれがまずかったらしい。
ようやく恋人の部屋を訪ねたのは、それは前回会ってから実に2週間後。
大学にも通い、バイトに明け暮れ、なかなか時間が取れなかった結果だ。
事前に部屋に行くことを知らせていたのに、部屋のドアホンを鳴らしても出てこない。
何度もドアホンと携帯電話を鳴らして、ようやく顔を出した恋人は。。。ボロボロだった。
この前、雨に濡れたせいで、熱出しちゃってて。
恋人、吉野千秋は言い訳のようにそう言った。
どうやらしばらく入浴していないらしく、少々汗臭い。
髪は寝ぐせで跳ねまくっている。
だけど羽鳥の心配はそこではなかった。
元々細身だった吉野はさらに痩せていたのだ。
おそらく満足に食事も取っていない。
いいから寝てろ。
羽鳥は吉野をやや強引にベットに押し込んだ。
そしてキッチンを物色して、ため息をつくことになる。
冷蔵庫の中には、ミネラルウォーターのボトルが数本あるだけ。
それ以外の食材は、米と調味料だけだった。
ゴミ袋には、かなりの数のカップラーメンの残骸。
これだけでこの2週間、吉野がどういう生活をしていたのか推察できる。
羽鳥はすぐに近所のスーパーに走った。
卵に野菜、果物の缶詰やスポーツドリンク等々。
手当たり次第に買いあさると、急ぎ足で戻る。
キッチンに立ち、作り始めたのは卵粥だ。
弱火でコトコトと粥を煮る間に、タオルを熱い湯で絞った。
ほら。身体を拭いてやるから。
羽鳥はそう言って、吉野のパジャマ代わりのシャツと短パンを脱がせた。
そして丁寧に全身を拭いていく。
最後はボクサーショーツも脱がせて、同様に。
極度の恥ずかしがり屋なのに抵抗しないのは、その体力も残っていないのだろう。
羽鳥は吉野の身体を拭き終わると、新しいシャツと下着、短パンを着せた。
俺ってどうしてこうなんだろう?
吉野はガックリと肩を落として、項垂れた。
羽鳥の中でその答えは、実に単純明快。
吉野が羽鳥の基準からすれば信じられないほどのズボラだからだ。
具体的に言うなら、天気予報も見なければ、傘も持たない。
濡れて帰っても、身体もしっかり拭かない。
つまりこの結果は必然なのだ。
だけど羽鳥は「気にするな」とその頭にそっと手を置き、なでた。
いろいろ言いたいことはあるけれど、それは今じゃない。
こんなに弱っている恋人に、説教をかますほど鬼畜ではないのだ。
それに羽鳥としては、こうして恋人の世話を焼くのが案外楽しかったりするのだ。
その夜、羽鳥は吉野の部屋に泊まった。
これは当初の予定通り。
だけどしっかり手を繋いで、眠ることになった。
本当は濃厚に愛し合うつもりでいたので、少々残念な気はする。
でもたまにはこんな穏やかな夜も悪くないだろう。
そして翌日、羽鳥は吉野の部屋を出た。
吉野の顔色は大分マシになったが、やはりまだ心配だ。
今日もまたこの部屋に来ようなどと考えながら、歩き出す。
だけど羽鳥が部屋を出た後、予想外のことが起こるのだ。
それを知る由もない羽鳥は、キビキビとした足取りでバイトに向かうのだった。
最愛の恋人はガックリと肩を落として、項垂れる。
だけど羽鳥は「気にするな」とその頭にそっと手を置き、なでた。
羽鳥芳雪は今日もピザの配達員のアルバイトに勤しんでいた。
梅雨時は注文が多い。
理由は簡単、雨の日の外出はめんどくさいからだ。
しかも今年は異常気象というのか、いきなり雨が降り出したり、強風の日が多い。
だからいつになく忙しい日が続いていた。
店長にしばらくシフトを増やして欲しいと頼まれたときは、快諾した。
もうすぐ夏休み、恋人と旅行にでも行きたいと思っていたからだ。
だがそれがまずかったらしい。
ようやく恋人の部屋を訪ねたのは、それは前回会ってから実に2週間後。
大学にも通い、バイトに明け暮れ、なかなか時間が取れなかった結果だ。
事前に部屋に行くことを知らせていたのに、部屋のドアホンを鳴らしても出てこない。
何度もドアホンと携帯電話を鳴らして、ようやく顔を出した恋人は。。。ボロボロだった。
この前、雨に濡れたせいで、熱出しちゃってて。
恋人、吉野千秋は言い訳のようにそう言った。
どうやらしばらく入浴していないらしく、少々汗臭い。
髪は寝ぐせで跳ねまくっている。
だけど羽鳥の心配はそこではなかった。
元々細身だった吉野はさらに痩せていたのだ。
おそらく満足に食事も取っていない。
いいから寝てろ。
羽鳥は吉野をやや強引にベットに押し込んだ。
そしてキッチンを物色して、ため息をつくことになる。
冷蔵庫の中には、ミネラルウォーターのボトルが数本あるだけ。
それ以外の食材は、米と調味料だけだった。
ゴミ袋には、かなりの数のカップラーメンの残骸。
これだけでこの2週間、吉野がどういう生活をしていたのか推察できる。
羽鳥はすぐに近所のスーパーに走った。
卵に野菜、果物の缶詰やスポーツドリンク等々。
手当たり次第に買いあさると、急ぎ足で戻る。
キッチンに立ち、作り始めたのは卵粥だ。
弱火でコトコトと粥を煮る間に、タオルを熱い湯で絞った。
ほら。身体を拭いてやるから。
羽鳥はそう言って、吉野のパジャマ代わりのシャツと短パンを脱がせた。
そして丁寧に全身を拭いていく。
最後はボクサーショーツも脱がせて、同様に。
極度の恥ずかしがり屋なのに抵抗しないのは、その体力も残っていないのだろう。
羽鳥は吉野の身体を拭き終わると、新しいシャツと下着、短パンを着せた。
俺ってどうしてこうなんだろう?
吉野はガックリと肩を落として、項垂れた。
羽鳥の中でその答えは、実に単純明快。
吉野が羽鳥の基準からすれば信じられないほどのズボラだからだ。
具体的に言うなら、天気予報も見なければ、傘も持たない。
濡れて帰っても、身体もしっかり拭かない。
つまりこの結果は必然なのだ。
だけど羽鳥は「気にするな」とその頭にそっと手を置き、なでた。
いろいろ言いたいことはあるけれど、それは今じゃない。
こんなに弱っている恋人に、説教をかますほど鬼畜ではないのだ。
それに羽鳥としては、こうして恋人の世話を焼くのが案外楽しかったりするのだ。
その夜、羽鳥は吉野の部屋に泊まった。
これは当初の予定通り。
だけどしっかり手を繋いで、眠ることになった。
本当は濃厚に愛し合うつもりでいたので、少々残念な気はする。
でもたまにはこんな穏やかな夜も悪くないだろう。
そして翌日、羽鳥は吉野の部屋を出た。
吉野の顔色は大分マシになったが、やはりまだ心配だ。
今日もまたこの部屋に来ようなどと考えながら、歩き出す。
だけど羽鳥が部屋を出た後、予想外のことが起こるのだ。
それを知る由もない羽鳥は、キビキビとした足取りでバイトに向かうのだった。
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