余計なお世話
「残さずに、全部食え」
「食べますから、急かさないで下さい!」
まるで生徒に注意する教師のような高野の言葉に、律は思い切り文句を言った。
律は高野に連れられて、丸川書店近くの定食屋にいた。
ここは野菜中心のヘルシーメニューなのに、ボリュームもあり、美味い。
丸川の社員たちもよくランチに利用する店だ。
だが今のような夜の時間帯は、見知った顔をほとんど見ない。
夜はみんな自宅近くの店を使うか、またこの店にアルコールメニューがないせいかもしれない。
「急がなくていいから、よく噛めよ」
「じゃあ声をかけないで下さい。それから見ないで下さい!」
高野がまた諭すように、そう告げる。
律は言い返しながら、顔をしかめた。
まったく残すなとか、急ぐなとか、よく噛めとか。
完全に子供扱いではないか。
本当に会社の前で倒れてしまったことを高野に知られたのが運のツキだ。
それ以来、高野は律の食事や睡眠時間にさえ、目を光らせるようになった。
今日だって、一緒に夕食をとることを勝手に決められただけじゃない。
この店も食べるメニューも、何の相談もなくチョイスされてしまった。
ここまで律の意見を無視されれば、さすがに頭にくる。
だけどその反面、嬉しかったりもするのだ。
野菜たっぷりの食事は、何だかそれだけで少し健康な気分になる。
しかもここまでしっかりと量を食べるのは、実は久しぶりだ。
高野が自分の身体のことを気遣ってくれているのが、ヒシヒシと伝わってくる。
律は高野の言葉に従い、ゆっくりと食べ物を咀嚼した。
先に食べ終えた高野は、楽しそうに律の口元を見ている。
「すみません。口にごはん、ついてますか?」
あまりのガン見に、律は思わず箸を止めて、そう聞いてしまう。
すると高野は「いや、別に」と答えた。
そしてニンマリと笑うと「もの食ってるのって、何かエロくていいな」と付け加える。
「は!?」
律は思わずそう言い返すと、顔をしかめた。
心配してくれることも、食事にまで気を配ってくれていることも感謝している。
だけどその合間に、食事している律にまで欲情しているとは。
しかもそれを告げた時には、もうほとんど食べ終えているのが忌々しい。
律は少しだけ怒りを込めて箸を置くと、高野は手を伸ばして、律の髪をくしゃくしゃとかき回した。
まったく怒るタイミングさえ、見事に外されている。
茶を飲み終えると、高野はおもむろに立ち上がり、律は慌てて後に続いた。
食時代だけは割り勘にしなくては。
高野に奢らせてしまったら、後で「身体で払え」とか言い出すに決まっている。
店を出ようとした律は、ふと客席に見知った2人がいるのを見つけた。
ジャプンの編集長、桐嶋と、営業の暴れグマ、横澤だ。
そう言えば、最近仲がいいという噂を聞く。
挨拶をした方がいいのかと思ったが、高野が「さっさと帰るぞ」と足早に店を出て行ってしまう。
律は「わかってます!」と叫び返すと、大急ぎでその後を追った。
「食べますから、急かさないで下さい!」
まるで生徒に注意する教師のような高野の言葉に、律は思い切り文句を言った。
律は高野に連れられて、丸川書店近くの定食屋にいた。
ここは野菜中心のヘルシーメニューなのに、ボリュームもあり、美味い。
丸川の社員たちもよくランチに利用する店だ。
だが今のような夜の時間帯は、見知った顔をほとんど見ない。
夜はみんな自宅近くの店を使うか、またこの店にアルコールメニューがないせいかもしれない。
「急がなくていいから、よく噛めよ」
「じゃあ声をかけないで下さい。それから見ないで下さい!」
高野がまた諭すように、そう告げる。
律は言い返しながら、顔をしかめた。
まったく残すなとか、急ぐなとか、よく噛めとか。
完全に子供扱いではないか。
本当に会社の前で倒れてしまったことを高野に知られたのが運のツキだ。
それ以来、高野は律の食事や睡眠時間にさえ、目を光らせるようになった。
今日だって、一緒に夕食をとることを勝手に決められただけじゃない。
この店も食べるメニューも、何の相談もなくチョイスされてしまった。
ここまで律の意見を無視されれば、さすがに頭にくる。
だけどその反面、嬉しかったりもするのだ。
野菜たっぷりの食事は、何だかそれだけで少し健康な気分になる。
しかもここまでしっかりと量を食べるのは、実は久しぶりだ。
高野が自分の身体のことを気遣ってくれているのが、ヒシヒシと伝わってくる。
律は高野の言葉に従い、ゆっくりと食べ物を咀嚼した。
先に食べ終えた高野は、楽しそうに律の口元を見ている。
「すみません。口にごはん、ついてますか?」
あまりのガン見に、律は思わず箸を止めて、そう聞いてしまう。
すると高野は「いや、別に」と答えた。
そしてニンマリと笑うと「もの食ってるのって、何かエロくていいな」と付け加える。
「は!?」
律は思わずそう言い返すと、顔をしかめた。
心配してくれることも、食事にまで気を配ってくれていることも感謝している。
だけどその合間に、食事している律にまで欲情しているとは。
しかもそれを告げた時には、もうほとんど食べ終えているのが忌々しい。
律は少しだけ怒りを込めて箸を置くと、高野は手を伸ばして、律の髪をくしゃくしゃとかき回した。
まったく怒るタイミングさえ、見事に外されている。
茶を飲み終えると、高野はおもむろに立ち上がり、律は慌てて後に続いた。
食時代だけは割り勘にしなくては。
高野に奢らせてしまったら、後で「身体で払え」とか言い出すに決まっている。
店を出ようとした律は、ふと客席に見知った2人がいるのを見つけた。
ジャプンの編集長、桐嶋と、営業の暴れグマ、横澤だ。
そう言えば、最近仲がいいという噂を聞く。
挨拶をした方がいいのかと思ったが、高野が「さっさと帰るぞ」と足早に店を出て行ってしまう。
律は「わかってます!」と叫び返すと、大急ぎでその後を追った。
1/2ページ