愛ある食事
「いただきます。」
律は両手を合わせると、箸を取る。
高野は「どうぞ」と答えて、同じように箸を取った。
少し前に、律は倒れた。
原因は過労と栄養失調だ。
早く高野に追いつきたいと、通常の仕事のほかに家で「自主練」をした。
過去のエメラルド作品をチェックし、高野作の少女漫画編集育成マニュアルを読みふけったのだ。
不覚にも会社の前で倒れて、病院に運ばれることになった。
それでも入院することもなく、事なきを得た筈だったのだが。
それ以来、高野と食事をすることを義務付けられてしまった。
基本は夕食、たまに朝食、休日は朝兼昼のブランチが多い。
高野は料理が上手だし、ありがたいといえばありがたい。
律の身体を気遣ってくれていることに、感謝もしている。
だけどやっぱり恥ずかしい。
高野と2人きりで向かい合わせの食事は、気まずいのだ。
何を話していいかわからない。
それに素直になれないから、お礼の言葉さえ言えない。
それでますます居心地の悪い気分になってしまう。
「ごちそうさまでした。」
食べ終わった律は箸を置くと、また両手を合わせた。
するとすでに食べ終わっていた高野が「ちょっと待て」と言う。
そして立ち上がると、冷蔵庫から何かを取り出して、律の前に置いた。
それはコンビニで売っているシュークリームだった。
パッケージには「期間限定、苺クリーム入り」と書かれている。
「今日は忙しかったから、甘いものを食ってないだろ」
「・・・ありがとうございます。」
律が礼を言ってシュークリームを手に取ると、高野は空になった律の湯呑みに茶を注いでくれた。
パッケージを破ってシュークリームを齧ると、甘酸っぱいクリームの味が口に広がった。
どうして今日、甘いものを食べていないと知っているのか。
それだけではなく、高野のメニューは不思議なことばかりなのだ。
昼に和食を食べると、夜は必ず洋風のメニューが出てくる。
逆に洋食にすると、夜は和食だ。
コンビニ弁当を食べると、夜はやたらに野菜が多めのメニューになる。
そんな感じで、まるで一緒にいないときまで見透かしたような食事を用意するのだ。
「愛だろ、愛」
一度不思議に思った律がそれを聞いたら、高野はそう答えた。
だから律は馬鹿馬鹿しくなって、もう聞くことを止めた。
もう深く考えないことにしよう。
食事は美味しいし、雰囲気は少々気まずいけど、嬉しくない訳じゃない。
それどころか律だって、本当は2人の食事が楽しみなのだ。
律は両手を合わせると、箸を取る。
高野は「どうぞ」と答えて、同じように箸を取った。
少し前に、律は倒れた。
原因は過労と栄養失調だ。
早く高野に追いつきたいと、通常の仕事のほかに家で「自主練」をした。
過去のエメラルド作品をチェックし、高野作の少女漫画編集育成マニュアルを読みふけったのだ。
不覚にも会社の前で倒れて、病院に運ばれることになった。
それでも入院することもなく、事なきを得た筈だったのだが。
それ以来、高野と食事をすることを義務付けられてしまった。
基本は夕食、たまに朝食、休日は朝兼昼のブランチが多い。
高野は料理が上手だし、ありがたいといえばありがたい。
律の身体を気遣ってくれていることに、感謝もしている。
だけどやっぱり恥ずかしい。
高野と2人きりで向かい合わせの食事は、気まずいのだ。
何を話していいかわからない。
それに素直になれないから、お礼の言葉さえ言えない。
それでますます居心地の悪い気分になってしまう。
「ごちそうさまでした。」
食べ終わった律は箸を置くと、また両手を合わせた。
するとすでに食べ終わっていた高野が「ちょっと待て」と言う。
そして立ち上がると、冷蔵庫から何かを取り出して、律の前に置いた。
それはコンビニで売っているシュークリームだった。
パッケージには「期間限定、苺クリーム入り」と書かれている。
「今日は忙しかったから、甘いものを食ってないだろ」
「・・・ありがとうございます。」
律が礼を言ってシュークリームを手に取ると、高野は空になった律の湯呑みに茶を注いでくれた。
パッケージを破ってシュークリームを齧ると、甘酸っぱいクリームの味が口に広がった。
どうして今日、甘いものを食べていないと知っているのか。
それだけではなく、高野のメニューは不思議なことばかりなのだ。
昼に和食を食べると、夜は必ず洋風のメニューが出てくる。
逆に洋食にすると、夜は和食だ。
コンビニ弁当を食べると、夜はやたらに野菜が多めのメニューになる。
そんな感じで、まるで一緒にいないときまで見透かしたような食事を用意するのだ。
「愛だろ、愛」
一度不思議に思った律がそれを聞いたら、高野はそう答えた。
だから律は馬鹿馬鹿しくなって、もう聞くことを止めた。
もう深く考えないことにしよう。
食事は美味しいし、雰囲気は少々気まずいけど、嬉しくない訳じゃない。
それどころか律だって、本当は2人の食事が楽しみなのだ。
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