クリスマスハンター

何か俺、もらい泣きしちゃいそう。
吉野はそう言いながら、すでに涙ぐんでいる。
羽鳥はそんな吉野の話をじっと黙って聞いていた。

発端は、吉野が編集部に原稿を届けに来たことだ。
羽鳥はちょうど席を外しており、応対したのは小野寺律だった。
折りしも時期はクリスマス。
今年も何とかクリスマスネタを描いたけど、もうネタがない。
そんな愚痴をこぼした吉野に、律は意外なことなことを教えてくれた。
高野さんの誕生日は12月24日なんですよ、と。

それを聞いた吉野は大いに期待した。
誕生日がクリスマスイヴなんて、すごい偶然。
きっと漫画のネタになるようなステキな経験をしているに違いない。
それを聞かせてもらうことはできないだろうか。
だがちょうど席にいた高野本人に聞いたら、意外な答えが返ってきた。
子供の頃は、クリスマスも誕生日も祝ってもらったことがないんです。

驚いてよくよく聞いて、愕然とする。
高野の両親は夫婦仲が悪く、息子である高野に関心を示さなかったという。
悪いことを聞いてしまった。
吉野はすっかり落ち込み、家に帰ると自己嫌悪をまぎらすように酒を飲んだ。
羽鳥が吉野の家に来た時には、冷蔵庫のビールはなくなっている状態。
高野の境遇を思い、目を潤ませるほど出来上がっていた。
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