たい焼きの食べ方

いただきます!
丸川書店エメラルド編集部の面々は、ほぼ同時にそれに齧りついた。
営業部の女性社員から差し入れられたのは、下心たっぷりのたい焼き5個。
ちょうど人数分だ。
間が悪く高野が会議中で席を外していたが、それ以外のメンバーは在席している。
4人の編集部員たちは相談の上、冷めないうちに食べようということになった。

かくして4人がたい焼きを齧った瞬間「あ!」と声を上げたのは木佐だった。
律が「どうしたんです?」と問いかける。
木佐は1口齧った自分のたい焼きを指差して「みんな、違うんだね」と意外そうに言った。
その言葉に羽鳥も美濃も律も、自分と他のメンバーのたい焼きを見比べる。
そしてその違いに気付いて「ええ?」とか「嘘!」と驚きの声を上げた。

木佐が気付いた違いとは。
全員、最初の一口の場所が違うのだ。
頭、尾っぽ、おなか、背びれ。
4人の手にあるそれぞれのたい焼きは、すべて違うところが齧られている。

え~?普通、頭から食べますよね?
そんなの野蛮だよ。尾っぽから食べる方が綺麗だって!
まずあんこの甘さを味わうには、おなかだろう?
背びれのちょっと焦げた美味しいところを、最初に食べたいでしょ!

4人は口々に自分の主張を述べた。
特に正解があるわけでもないのに全員が無駄に自信満々。
ちなみに頭から食べたのが律、尾っぽから食べたのが美濃。
おなかから食べたのが羽鳥で、背びれから食べたのが木佐だ。

あ、面白いサイトがありますよ。
残りのたい焼きを頬張りながらパソコンをいじっていた律が声を上げる。
木佐は椅子のキャスターを滑らせながら「どれどれ」と律の席に身体を寄せてパソコンを見る。
興味を惹かれたらしい羽鳥と美濃も席を立つと、律の背後に回ってパソコンを覗く。
それはたい焼き店のホームページで「食べ方でわかる性格判断」なるものを掲載していた。
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