欲情ピアス

おかえりなさい。おフロとごはん、どっちにします?
木佐翔太が会社から帰宅すると、ドアを開けるやいなやそう聞かれた。
声の主はもちろん押しかけ同棲中の恋人、雪名皇だ。
エプロン姿でキッチンに立つ雪名は、やはり美しい。
料理などという所帯じみたことをしているにも関わらず、王子様のようだ。

まったく困ったものだと木佐は思う。
キラキラオーラをこれでもかと巻き散らかすのは何とかして欲しい。
この部屋にこれ以上このキラキラが充満したら、酸欠になりそうだ。
窒息死してしまったら、どうしてくれる。

木佐は必死に冷静な様子を装いながら「先にフロにするわ」と答えた。
正直なところ空腹であり、1人だったら間違いなく先に食事をチョイスしている。
だが今は食欲よりも、まずは1人になることだ。
熱い湯で仕事の疲れを取って、キラキラオーラに対抗するべく体勢を整える。
それはもはや木佐翔太のルーティーンになりつつあった。
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