ハロウィンの夢

目を覚ました小野寺律は思わず顔をしかめていた。
いつもと同じ、平日の朝。
さっさと会社に行く支度をしなくてはならない。
だけどしばらくベットから起き上がらずに、ゴロゴロしていた。
会社に行きたくない。
それは先程まで見ていた夢のせいだ。
幼い頃のハロウィンにまつわる嫌な思い出の夢。

あんな夢を見た理由はわかっている。
いつもはリリカルにファンシーに、ピンク色に飾られるエメラルド編集部。
それが最近になって、オレンジへと色合いを変えた。
理由は簡単、ハロウィンだ。
律の席の前にもあのカボチャ-本物ではなくプラスチックの玩具-が置かれた。
何で日本人がハロウィンでこんなに浮かれなければならないのだろうと思う。
だがエメラルド編集部の面々は、嬉々として部内をオレンジ色に飾り立てていた。

コンビニもよくない。
毎日食事のお世話になっているコンビニもオレンジ色の商品が目立つ。
例えば菓子でも、わざわざあのかぼちゃの絵のパッケージに変えたりするのだ。
その上、カボチャで作ったプリンやらケーキなんかがが増える。
忌々しいので、昨晩はコンビニより遠いのを覚悟して弁当屋に行った。 
すると弁当屋の店先まで、大きなかぼちゃが飾られていた。
別にイライラすると言うほどでもないし、憂鬱になるほどでもない。
だがあまりいい気分ではない。

その理由は、律はハロウィンが好きではないからだ。
そしてそのきっかけは小さい頃に起こったちょっとした出来事が原因だった。
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