千秋と律と猫の耳
吉野千秋と小野寺律は、丸川書店の会議室にいた。
通常は数人程度の会議に使用するこじんまりした会議スペース。
テーブルの上に並べられているのは、いわゆる猫耳カチューシャだ。
仕事場で2人がこんなものを眺めているのには、もちろん理由がある。
サファイア文庫から出される小説の表紙と挿絵を吉野が描くことになったのだ。
吉野はその打ち合わせのために、丸川書店にやって来た。
なぜ猫耳カチューシャなのかというと、もちろん遊んでいるわけではない。
今回吉野が表紙と挿絵を描く小説に出てくるのだ。
小説はBLで、黒髪と茶髪の2人の少年の恋物語。
その2人が初めて一緒に夜を過ごし、朝起きると猫耳が生えていた。
そしてそこからドタバタコメディが展開するというお話だ。
絵を描くに当たり、もちろん吉野は原稿を読んだ。
荒唐無稽でありながらベタベタなお話だが、面白かった。
何よりも王道の乙女な恋物語を得意とする吉野には、絶対に思いつけない話だ。
だからこのお話の絵を描くことができてよかったと思う。
だがいざ描こうと思うと、案外難しいことに気がついた。
何しろ人間に猫耳が生えているなんて、実際にこの目で見たことがないのだ。
位置とか角度とか形とか、とにかくこれでいいのかと迷ってしまう。
何枚も描いてみたもののどうにもしっくりこないのだ。
羽鳥に相談したら、思いもかけない答えが返ってきた。
モデルを用意して、猫耳カチューシャをつけさせるからと。
そして言われた時間に丸川書店の会議室に出向くと、大量の猫耳カチューシャと律が待ち構えていたのだ。
「あの、小野寺さん。まさかと思いますが、モデルって。。。」
「そのまさかです。」
律は真っ赤な顔で困ったように目を伏せた。
そのかわいらしい表情に、吉野は乙女部の底力を思い知った。
通常は数人程度の会議に使用するこじんまりした会議スペース。
テーブルの上に並べられているのは、いわゆる猫耳カチューシャだ。
仕事場で2人がこんなものを眺めているのには、もちろん理由がある。
サファイア文庫から出される小説の表紙と挿絵を吉野が描くことになったのだ。
吉野はその打ち合わせのために、丸川書店にやって来た。
なぜ猫耳カチューシャなのかというと、もちろん遊んでいるわけではない。
今回吉野が表紙と挿絵を描く小説に出てくるのだ。
小説はBLで、黒髪と茶髪の2人の少年の恋物語。
その2人が初めて一緒に夜を過ごし、朝起きると猫耳が生えていた。
そしてそこからドタバタコメディが展開するというお話だ。
絵を描くに当たり、もちろん吉野は原稿を読んだ。
荒唐無稽でありながらベタベタなお話だが、面白かった。
何よりも王道の乙女な恋物語を得意とする吉野には、絶対に思いつけない話だ。
だからこのお話の絵を描くことができてよかったと思う。
だがいざ描こうと思うと、案外難しいことに気がついた。
何しろ人間に猫耳が生えているなんて、実際にこの目で見たことがないのだ。
位置とか角度とか形とか、とにかくこれでいいのかと迷ってしまう。
何枚も描いてみたもののどうにもしっくりこないのだ。
羽鳥に相談したら、思いもかけない答えが返ってきた。
モデルを用意して、猫耳カチューシャをつけさせるからと。
そして言われた時間に丸川書店の会議室に出向くと、大量の猫耳カチューシャと律が待ち構えていたのだ。
「あの、小野寺さん。まさかと思いますが、モデルって。。。」
「そのまさかです。」
律は真っ赤な顔で困ったように目を伏せた。
そのかわいらしい表情に、吉野は乙女部の底力を思い知った。
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