美咲と律の七夕スペシャル
「七夕イベントの補佐をしてくるように」
編集長の桐嶋にそう言い渡されたのは、昨日のこと。
美咲は「はい!」と元気よく頷き、エメラルド編集部を訪ねた。
丸川書店の七夕イベント。
ここ数年、毎年開催されているそれは、なかなか大掛かりなものだ。
丸川書店の漫画に登場する人気キャラを何人かキャスティングする。
そして七夕にちなんだオリジナルストーリーの朗読劇をするのだ。
演じるのはプロの声優で、アニメ化されていればそのキャストが演じる。
ストーリーは連載中の作品でアンケートの順位が高い作家に依頼する。
作品をまたいだ本来なら絡まないはずのキャラたちが織りなす物語、夢の企画だ。
客は抽選による招待、つまり無料イベントだ。
ただし雑誌に応募券をつけて、それを添付して応募する。
企画したのはエメラルド編集部。
だから最初は月刊エメラルドの作品だけで行われていた。
会社もそんなに乗り気ではなかったらしい。
だが昨今の声優ブームに上手く乗れたらしく、イベントは大盛況。
そして応募券をつけた雑誌はバカ売れした。
人数限定のイベント、読者は何冊も購入して何口も応募したからだ。
そして今年からこの企画にジャプンも相乗りする。
作品どころか、本の壁さえ超えた壮大なコラボだ。
抜擢されたジャプンの担当者は、新入部員の高橋美咲。
まだ配属されたばかりで、担当作品さえ持たない新人が大抜擢された。
「よろしくお願いします!」
さっそくエメラルド編集部を訪れた美咲は、勢いよく頭を下げた。
人気企画に抜擢されたことで、かなり力が入っている。
エメラルド側の担当者、小野寺律は「こちらこそ」と笑った。
彼こそがこの企画の発案者だ。
「一緒にイベントまで頑張ろうね」
穏やかに微笑む律に、美咲は「はい」と何度も頷いた。
人気企画であり、ジャプン編集部の先輩たちもやりたがっていた仕事。
これが自分のキャリアの始まりなんだと、大きく意気込んでいたのだが。
「実際の作業、地味で驚いたでしょ?」
仕事を始めて程なくして、律が美咲にそう言った。
美咲は「えぇと」と言葉を濁す。
律は「雑用だからねぇ」と笑った。
そう、実際には雑用ばかりだった。
朗読劇のシナリオを作るのは作家、演じるのは声優。
律たちはそれにまつわる雑用仕事を受け持つ。
今は舞台装置の1つとなる竹に、大量の短冊を飾り付け中だ。
そしてその短冊も読者から寄せられたメッセージを2人で書き写した。
本当に地味な作業である。
「でも作家さんや声優さんのプロの仕事を間近で見られる。勉強になるよ。」
「そうですね。」
「それに短冊の飾りつけは七夕気分を味わえる。風流でしょ?」
悪戯っぽく笑う律に、美咲も思わず笑った。
初めての仕事は思ってたのとはかなり違った。
地味で単調で結構疲れる。
だけど割り切れば楽しいし、風流だし、勉強になる。
織姫のように美しい先輩編集者は、それを教えてくれた。
編集長の桐嶋にそう言い渡されたのは、昨日のこと。
美咲は「はい!」と元気よく頷き、エメラルド編集部を訪ねた。
丸川書店の七夕イベント。
ここ数年、毎年開催されているそれは、なかなか大掛かりなものだ。
丸川書店の漫画に登場する人気キャラを何人かキャスティングする。
そして七夕にちなんだオリジナルストーリーの朗読劇をするのだ。
演じるのはプロの声優で、アニメ化されていればそのキャストが演じる。
ストーリーは連載中の作品でアンケートの順位が高い作家に依頼する。
作品をまたいだ本来なら絡まないはずのキャラたちが織りなす物語、夢の企画だ。
客は抽選による招待、つまり無料イベントだ。
ただし雑誌に応募券をつけて、それを添付して応募する。
企画したのはエメラルド編集部。
だから最初は月刊エメラルドの作品だけで行われていた。
会社もそんなに乗り気ではなかったらしい。
だが昨今の声優ブームに上手く乗れたらしく、イベントは大盛況。
そして応募券をつけた雑誌はバカ売れした。
人数限定のイベント、読者は何冊も購入して何口も応募したからだ。
そして今年からこの企画にジャプンも相乗りする。
作品どころか、本の壁さえ超えた壮大なコラボだ。
抜擢されたジャプンの担当者は、新入部員の高橋美咲。
まだ配属されたばかりで、担当作品さえ持たない新人が大抜擢された。
「よろしくお願いします!」
さっそくエメラルド編集部を訪れた美咲は、勢いよく頭を下げた。
人気企画に抜擢されたことで、かなり力が入っている。
エメラルド側の担当者、小野寺律は「こちらこそ」と笑った。
彼こそがこの企画の発案者だ。
「一緒にイベントまで頑張ろうね」
穏やかに微笑む律に、美咲は「はい」と何度も頷いた。
人気企画であり、ジャプン編集部の先輩たちもやりたがっていた仕事。
これが自分のキャリアの始まりなんだと、大きく意気込んでいたのだが。
「実際の作業、地味で驚いたでしょ?」
仕事を始めて程なくして、律が美咲にそう言った。
美咲は「えぇと」と言葉を濁す。
律は「雑用だからねぇ」と笑った。
そう、実際には雑用ばかりだった。
朗読劇のシナリオを作るのは作家、演じるのは声優。
律たちはそれにまつわる雑用仕事を受け持つ。
今は舞台装置の1つとなる竹に、大量の短冊を飾り付け中だ。
そしてその短冊も読者から寄せられたメッセージを2人で書き写した。
本当に地味な作業である。
「でも作家さんや声優さんのプロの仕事を間近で見られる。勉強になるよ。」
「そうですね。」
「それに短冊の飾りつけは七夕気分を味わえる。風流でしょ?」
悪戯っぽく笑う律に、美咲も思わず笑った。
初めての仕事は思ってたのとはかなり違った。
地味で単調で結構疲れる。
だけど割り切れば楽しいし、風流だし、勉強になる。
織姫のように美しい先輩編集者は、それを教えてくれた。
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