千秋と律の異世界物語5
「もう1回、言ってくれ。」
高野はかすかに眉を潜めながら、羽鳥を見る。
羽鳥は内心申し訳ない気持ちになりながら、息を吸い込んだ。
婚約破棄された令嬢も偽物扱いされた聖女もタイムリープした悪役令嬢も追放された冒険者も!
みんなでざまぁして、幸せになっちゃいましょう。
羽鳥は流れるように言い切った。
正直言って、真面目な顔で口にするのが恥ずかしい。
何よりも息を吸い込まないと、最後まで一気に言えないのが忌々しい。
それが吉川千春の新作のタイトルだった。
ただし、あくまで仮である。
羽鳥は了承していない。
最近の作品、特に異世界モノのタイトルは長いのがトレンドなのは知っている。
だけどいくら何でもちょっと悪ノリし過ぎている感は否めない。
ちなみにここはエメラルド編集部、編集長の高野の席の前である。
他の作家の作品の件で、企画資料を提出した。
高野はそれを受け取りながら、ついでのように聞いてきたのだ。
曰く「吉川先生の新作、タイトルは決まったか?」と。
異世界モノという案が先走り、タイトルが後回しになっていたのだ。
「マジか。それ、許可を出したのか?」
高野は真面目な顔で、羽鳥に詰め寄る。
羽鳥は「本人の案です。結構ごねてまして」と答える。
長いタイトルにするにしても、もうちょっとなんかあるだろ。
羽鳥はそう思い、何とか吉野を説得しようとしているが、うまくいっていない。
「じゃあまだ未確定だな」
高野に念を押されて、羽鳥は「はい」と頷く。
言外に「何とかしろ」と言われていると、ちゃんと理解している。
席にいる同僚編集者たちから、同情めいた視線が向けられているのもわかった。
席に戻った羽鳥は、小さくため息をついた。
吉野はこのタイトルを大いに気に入っているらしく、折れる気配がない。
どうやって説得するか、頭が痛い問題だった。
高野はかすかに眉を潜めながら、羽鳥を見る。
羽鳥は内心申し訳ない気持ちになりながら、息を吸い込んだ。
婚約破棄された令嬢も偽物扱いされた聖女もタイムリープした悪役令嬢も追放された冒険者も!
みんなでざまぁして、幸せになっちゃいましょう。
羽鳥は流れるように言い切った。
正直言って、真面目な顔で口にするのが恥ずかしい。
何よりも息を吸い込まないと、最後まで一気に言えないのが忌々しい。
それが吉川千春の新作のタイトルだった。
ただし、あくまで仮である。
羽鳥は了承していない。
最近の作品、特に異世界モノのタイトルは長いのがトレンドなのは知っている。
だけどいくら何でもちょっと悪ノリし過ぎている感は否めない。
ちなみにここはエメラルド編集部、編集長の高野の席の前である。
他の作家の作品の件で、企画資料を提出した。
高野はそれを受け取りながら、ついでのように聞いてきたのだ。
曰く「吉川先生の新作、タイトルは決まったか?」と。
異世界モノという案が先走り、タイトルが後回しになっていたのだ。
「マジか。それ、許可を出したのか?」
高野は真面目な顔で、羽鳥に詰め寄る。
羽鳥は「本人の案です。結構ごねてまして」と答える。
長いタイトルにするにしても、もうちょっとなんかあるだろ。
羽鳥はそう思い、何とか吉野を説得しようとしているが、うまくいっていない。
「じゃあまだ未確定だな」
高野に念を押されて、羽鳥は「はい」と頷く。
言外に「何とかしろ」と言われていると、ちゃんと理解している。
席にいる同僚編集者たちから、同情めいた視線が向けられているのもわかった。
席に戻った羽鳥は、小さくため息をついた。
吉野はこのタイトルを大いに気に入っているらしく、折れる気配がない。
どうやって説得するか、頭が痛い問題だった。
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