千秋と律のクールビズ
「あーつーいぃ!」
吉野千秋は社会人らしからぬ声を上げながら、冷房の効いたビルの中へと逃げ込んだ。
何しろ部屋に閉じこもって仕事をする身、この猛暑の中歩くのは本当につらい。
まったくここ最近の夏の暑さは何なのだろう。
天気予報では「予想最高気温は35度です」なんて平然と言ったりする。
熊谷で38度だとか、館林で39度だとか。
体温より高くなるなんて、想像しただけで気が遠くなりそうだ。
しかも今年はかなり早い段階から、すでに暑い。
東京で7月の上旬から35度超えなんて、ありえない。
それでいて夏が早く始まったから、終わりも早いというわけではないらしい。
こんな暑さが長く続くなんて、反則ではないか。
吉野は心の中で悪態をつきながら、取り出したタオルで汗を拭いた。
羽鳥と打ち合わせをするために、吉野は丸川書店を訪れたのだ。
約束の午後3時まで、あと10分ある。
とりあえず冷房で火照った身体を冷やそう。
汗が引いてから、エメラルド編集部に行くつもりだった。
「あれ、吉。。。野さん。」
吉野が廊下の隅で涼んでいると、エレベーターから見覚えのある人物が降りてきた。
羽鳥の後輩で、月刊エメラルドの一番若い編集部員、小野寺律だ。
咄嗟に「吉川先生」と呼びかけたようだが、すぐに「吉野」と言い直してくれた。
「こんにちは。今日はどうしたんですか?」
「これから羽鳥と打ち合わせで。その前に涼んでました。」
「え?今日は別の担当作家が熱中症で倒れて、羽鳥はそっちに向かったんですが。。。」
律が首を傾げながら、教えてくれる。
吉野は慌てて携帯電話を取り出すと、メールの着信を示すランプが光っていた。
予想通り羽鳥からのメールで、今律が教えてくれた通りのことが書いてある。
不在着信もある。
おそらく羽鳥は吉野が電話に出なかったので、仕方なくメールを送ったのだろう。
しかも吉野が家を出るより前に発信されている。
どうやら暑さでボーっとしていたせいで、電話がなったことさえ気付かなかったようだ。
「無駄足かぁ。。。」
吉野はガックリと肩を落とした。
早く電話に気付いていれば、こんなに暑い中無駄に動き回らずにすんだのだ。
しかも何の関係もない律を、申し訳なさそうな表情にさせてしまった。
もうカッコ悪いにも程がある。
「もう帰るのも、面倒くさいし」
吉野は半ばヤケ気味に文句を言う。
すると律が「あの」と吉野の表情をうかがうように、そっと声を上げた。
吉野千秋は社会人らしからぬ声を上げながら、冷房の効いたビルの中へと逃げ込んだ。
何しろ部屋に閉じこもって仕事をする身、この猛暑の中歩くのは本当につらい。
まったくここ最近の夏の暑さは何なのだろう。
天気予報では「予想最高気温は35度です」なんて平然と言ったりする。
熊谷で38度だとか、館林で39度だとか。
体温より高くなるなんて、想像しただけで気が遠くなりそうだ。
しかも今年はかなり早い段階から、すでに暑い。
東京で7月の上旬から35度超えなんて、ありえない。
それでいて夏が早く始まったから、終わりも早いというわけではないらしい。
こんな暑さが長く続くなんて、反則ではないか。
吉野は心の中で悪態をつきながら、取り出したタオルで汗を拭いた。
羽鳥と打ち合わせをするために、吉野は丸川書店を訪れたのだ。
約束の午後3時まで、あと10分ある。
とりあえず冷房で火照った身体を冷やそう。
汗が引いてから、エメラルド編集部に行くつもりだった。
「あれ、吉。。。野さん。」
吉野が廊下の隅で涼んでいると、エレベーターから見覚えのある人物が降りてきた。
羽鳥の後輩で、月刊エメラルドの一番若い編集部員、小野寺律だ。
咄嗟に「吉川先生」と呼びかけたようだが、すぐに「吉野」と言い直してくれた。
「こんにちは。今日はどうしたんですか?」
「これから羽鳥と打ち合わせで。その前に涼んでました。」
「え?今日は別の担当作家が熱中症で倒れて、羽鳥はそっちに向かったんですが。。。」
律が首を傾げながら、教えてくれる。
吉野は慌てて携帯電話を取り出すと、メールの着信を示すランプが光っていた。
予想通り羽鳥からのメールで、今律が教えてくれた通りのことが書いてある。
不在着信もある。
おそらく羽鳥は吉野が電話に出なかったので、仕方なくメールを送ったのだろう。
しかも吉野が家を出るより前に発信されている。
どうやら暑さでボーっとしていたせいで、電話がなったことさえ気付かなかったようだ。
「無駄足かぁ。。。」
吉野はガックリと肩を落とした。
早く電話に気付いていれば、こんなに暑い中無駄に動き回らずにすんだのだ。
しかも何の関係もない律を、申し訳なさそうな表情にさせてしまった。
もうカッコ悪いにも程がある。
「もう帰るのも、面倒くさいし」
吉野は半ばヤケ気味に文句を言う。
すると律が「あの」と吉野の表情をうかがうように、そっと声を上げた。
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