* Kuroko Side -1- *
何だか最近、ひどく眠い。

ウィンターカップが終わって、年が明けた。
でも気を抜いている暇はない。
ボクたち誠凛高校は無名のダークホースだったけど、今はもう違う。
ウィンターカップでの活躍と共に有名になってしまった。
あちこちの学校で、戦力を研究され尽くすだろう。
そんな中でも勝ち続けなければならない。
そのためにはもっともっと練習して、強くなるしかない。

それなのに、どうしてこんなに眠いんだろう。
その上、ひどくだるい。
練習中も頭がボーっとしてて、身体も思うように動かない。
ウィンターカップ前の合宿で、温泉でのぼせてしまった時に似てる。
なんだか頭も身体もフワフワして、地に足がついていないみたいな感覚なんだ。

まだウィンターカップの疲れが取れていないみたいね。
カントクはそう言った。
バスケ部の中でも一番小柄で、体力も腕力も多分一番下。
そんなボクだから、まだ疲れが取れないんだろう。

絶対に無理だけはするなよ。
念を押すのは主将。
普通、主将の任期は１年だけど、この人はその２倍やってる。
だからかな？部員に対する気遣いはすごく細やかだ。

特に痛いところはないんだよな？
心配して、聞いてくれるのは木吉センパイ。
故障で長く戦線離脱して、今また治療に重点を置くこの人は、ケガに敏感なんだ。

本当に大丈夫かよ。
ぶっきらぼうにそう言ったのは火神君だ。
一見虎みたいに獰猛な風貌だけど、実は情に厚く優しくて、影である僕のことも心配してくれる。

故障じゃねぇから大丈夫だと思うが、続くようなら病院に行け。
カントクのお父さん、景虎さんはそう言った。
どうやらカントクが、お父さんに相談してくれたらしい。

だけど病院に行くとしたら、何科になるんだろう。
怪我もなく、痛みもなく、ただただ眠くてダルいだけ。
ちなみに「異常な眠気」ってネットで検索したら、１番上にきたのは糖尿病だった。
血糖値の急激な変化で、異常に眠くなることがあるって。
断言することはできないけれど、糖尿病っていうのは明らかに違う気がする。

家で睡眠時間も増えたし、休み時間もほとんど机に突っ伏して眠っている。
そんな中、最近よく見るのは、なぜか青峰君の夢だ。
中学時代、何となく気まずいまま別れてしまった。
高校で敵として再会して、インターハイでは惨敗。
でもウィンターカップで雪辱を果たして、今では対等なライバルだと思ってる。

でも夢の中の青峰君は、ちょっと違うんだ。
中学時代、部活の後に一緒に練習をした。
またはウィンターカップでの試合の後、シュートを教えてもらったりした。
夢はだいたいそのどっちか、つまり現実にあった場面ばかり。
だけど青峰君の優しさが、微妙に実際よりも増量されている。
中学時代は２割増、ウィンターカップの試合後だと５割増くらいかな。
夢の中の青峰君は、とにかく甘くて優しい。

夢は心の中の願望を映すって、聞いたことがある。
それが本当だとしたら、ボクは青峰君に優しくされたいって思ってるのかな。
だとしたら、我ながらちょっとドン引きだ。
誠凛のみんなに心配かけているくせに、その上なにを望んでいるんだか。

だけどそれ以上考えようとすると、また眠くなる。
そしてまた眠りに堕ちて、青峰君の夢を見るんだ。