モノローグ(火黒)
* Kuroko Side -1- *
ボクはこの先、いつまでバスケができるんだろう。
ウィンターカップが終わった。
ボクはかつてのチームメイトである「キセキの世代」と対戦した。
試合の結果だけ見たら、勝ったと言えるんだろう。
誠凛というチームで、みんなで力を合わせて勝てたことはすごく嬉しい。
だけどどうしてもこの先のことを思うと、少しだけ気が重い。
本当にどうしようもなくため息が出てしまう。
彼らに勝つために「消えるドライブ」とか「幻影のシュート」とか、必死に技を絞り出す。
だけどそれが通用するのは、披露してから数試合だけだ。
天才集団である「キセキの世代」の面々は、すぐに打ち破ってしまう。
毎回毎回破られるたびに、必死に頭を巡らせることになる。
もちろん試合の時は、すごくスリリングで興奮する。
みんなの力を借りて、ピンチを乗り切った時には嬉しくて、嬉しくて叫びだしたくなる。
だけどたまにものすごく不安になることがあるんだ。
体格も体力もバスケのテクニックだって、ボクは人より劣ってる。
毎回身を切るようにして捻り出す策は、いつまで通用するんだろう。
もしかしたらそう遠くない未来、ボクはもう通用しなくなるかもしれない。
全てを出し切って、搾りカスみたいに何もなくなったボクは、バスケ部に不要な存在になるのかも。
バスケ部に不要な存在になったら、火神君は今まで通りにボクと接してくれるかな。
ボクとは正反対、恵まれた大きな身体と才能を持っていて、1人で「キセキの世代」と戦える人。
彼の才能が完全に開花して、ボクがイラナイ存在になったら。
ボクは彼の隣にいることができるんだろうか。
ああ、こんな場所にいるから、ネガティブなことを考えるんだ。
ボクは誰もいない薄暗い体育館を見回して、ホッとため息をつく。
部活が終わって、もうみんな部室で着替えて帰る準備をしている。
ボクはタオルを忘れてしまったことに気付いて、1人で取りに戻ったところだった。
さっきまで部員たちの熱気に包まれた空間は、嘘のようにガランとしている。
こんな寂しい場所にいるから、いつもは忘れている不安が首をもたげてくるんだろう。
ボクはステージの上に置き忘れていたタオルを取ると、出口に向かって走り出した。
早く部室に戻ろう。
明るくて、仲間が笑っているあの場所に。
だがボクはすぐに小走りになっていた足を止めた。
扉の前に見知らぬ男の人が立っているのが見えたからだ。
あの、何か御用ですか?
ボクはその人にそっと声をかけた。
濃い茶色のジャンバーを着たその人は、多分20代後半くらい。
年齢的にも服装的にも、うちの学校の生徒じゃない。
それに先生にもこういう人はいなかったと思う。
だとすると何か用事があって、訪ねて来た人だろう。
その人はボクの質問には答えてくれなかった。
だけど血走った目で、ボクをジロリと睨んでいる。
もしかして声をかけられたくなかったんだろうか。
ボクは慌てて「すみません」と頭を下げて、その人の隣をすり抜けようとした。
だがその瞬間、ボクは「え?」と声を上げた。
その人が何か銀色に光るものをボクに向かって振り上げたからだ。
それがナイフだとわかったときには、刃先はもうボクの目の前に迫っていた。
ボクはこの先、いつまでバスケができるんだろう。
ウィンターカップが終わった。
ボクはかつてのチームメイトである「キセキの世代」と対戦した。
試合の結果だけ見たら、勝ったと言えるんだろう。
誠凛というチームで、みんなで力を合わせて勝てたことはすごく嬉しい。
だけどどうしてもこの先のことを思うと、少しだけ気が重い。
本当にどうしようもなくため息が出てしまう。
彼らに勝つために「消えるドライブ」とか「幻影のシュート」とか、必死に技を絞り出す。
だけどそれが通用するのは、披露してから数試合だけだ。
天才集団である「キセキの世代」の面々は、すぐに打ち破ってしまう。
毎回毎回破られるたびに、必死に頭を巡らせることになる。
もちろん試合の時は、すごくスリリングで興奮する。
みんなの力を借りて、ピンチを乗り切った時には嬉しくて、嬉しくて叫びだしたくなる。
だけどたまにものすごく不安になることがあるんだ。
体格も体力もバスケのテクニックだって、ボクは人より劣ってる。
毎回身を切るようにして捻り出す策は、いつまで通用するんだろう。
もしかしたらそう遠くない未来、ボクはもう通用しなくなるかもしれない。
全てを出し切って、搾りカスみたいに何もなくなったボクは、バスケ部に不要な存在になるのかも。
バスケ部に不要な存在になったら、火神君は今まで通りにボクと接してくれるかな。
ボクとは正反対、恵まれた大きな身体と才能を持っていて、1人で「キセキの世代」と戦える人。
彼の才能が完全に開花して、ボクがイラナイ存在になったら。
ボクは彼の隣にいることができるんだろうか。
ああ、こんな場所にいるから、ネガティブなことを考えるんだ。
ボクは誰もいない薄暗い体育館を見回して、ホッとため息をつく。
部活が終わって、もうみんな部室で着替えて帰る準備をしている。
ボクはタオルを忘れてしまったことに気付いて、1人で取りに戻ったところだった。
さっきまで部員たちの熱気に包まれた空間は、嘘のようにガランとしている。
こんな寂しい場所にいるから、いつもは忘れている不安が首をもたげてくるんだろう。
ボクはステージの上に置き忘れていたタオルを取ると、出口に向かって走り出した。
早く部室に戻ろう。
明るくて、仲間が笑っているあの場所に。
だがボクはすぐに小走りになっていた足を止めた。
扉の前に見知らぬ男の人が立っているのが見えたからだ。
あの、何か御用ですか?
ボクはその人にそっと声をかけた。
濃い茶色のジャンバーを着たその人は、多分20代後半くらい。
年齢的にも服装的にも、うちの学校の生徒じゃない。
それに先生にもこういう人はいなかったと思う。
だとすると何か用事があって、訪ねて来た人だろう。
その人はボクの質問には答えてくれなかった。
だけど血走った目で、ボクをジロリと睨んでいる。
もしかして声をかけられたくなかったんだろうか。
ボクは慌てて「すみません」と頭を下げて、その人の隣をすり抜けようとした。
だがその瞬間、ボクは「え?」と声を上げた。
その人が何か銀色に光るものをボクに向かって振り上げたからだ。
それがナイフだとわかったときには、刃先はもうボクの目の前に迫っていた。
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