第28話「お見舞い」
「何を、してるの?」
小牧はドアの外でじっと身を潜めている怪しい2人に声をかけた。
すると2人は揃って唇の前に指を立てて、無言のまま「静かにしろ!」と威圧された。
当麻蔵人の亡命は成功した。
郁が大阪の英国総領事館まで、当麻を送り届けたのだ。
図書隊としては、かなりヒヤヒヤする展開ではあった。
途中当麻と郁は所在がわからなくなり、堂上は被弾したのだから。
だがそれでも何とか作家・当麻蔵人を守ることはできたのだ。
しばらく世間は大いに騒いだ。
連日ニュースとして取り上げられ、テレビをつければどこかで必ず手塚慧が喋っている。
これで世の中が変わる。
一気に劇的には無理だけれど、検閲撤廃への道筋が朧気ながら見え始めたと思う。
図書隊員たちの士気は大いに上がっていた。
そして小牧たちにとって、もう1つの懸案も一気に進んだ。
何年もジレジレしていた堂上と郁が、ついに結ばれたのである!
郁はもう仕事復帰しているが、堂上はまだ病院である。
課業後にいそいそと見舞いに向かう郁は、すっかりお馴染みの光景になった。
小牧は荷物を抱えて、病院に向かっていた。
郁ほどではないが、小牧もまた頻繁に通っている。
理由はもちろん堂上に会いたくて。。。ではない。
入院中の着替えを持っていくためだ。
また汚れ物を持ち帰って、洗濯したりもする。
堂上の病室に行くときは、注意が必要だ。
よく確認せずにドアを開けようものなら、大変なことになる。
何年も想いを拗らせまくって、ようやく結ばれたラブラブバカップル。
そのイチャイチャラブシーンに出くわし、凶悪なピンクオーラにやられてしまうのだ。
だから小牧は病室のかなり前から足音を響かせ、大きくノックをすることにしている。
でもこの日は違った。
堂上の病室の前に、怪しげな2人組が佇んでいたのだ。
小牧は思わず立ち止まり、堂上張りに眉間にシワを寄せた。
一応隊内では堂上の見舞いは特殊部隊の許可を取るようにと、通達してある。
表向きは、堂上がリハビリに専念できるように。
だが実は郁と2人だけの時間を作ってやろうという意図があった。
それでもここは病院であり、実際に中に入ることは容易だ。
だから通達に従わなかった図書隊員が、冷やかしに来たのかと思ったのだ。
だがよくよく目を凝らして、驚いた。
2人組の正体は、図書隊員ではなかったからだ。
それどころか、まさかまさかの良化隊員。
三橋廉と阿部隆也だ。
ラフな私服姿の2人は遠目に見れば、学生のように若々しい。
「何を、してるの?」
小牧が問うなり、2人は申し合わせたように唇の前に指を立てた。
そこで小牧は「なるほど」と頷く。
見舞いに来たものの、病室の中は絶賛ラブシーン中というわけだ。
「悪いね。気を使わせて」
小牧は苦笑しながら、詫びた。
未だに敵対関係の図書隊と良化隊。
だけど少なくても今、この場所では戦闘とは無縁だ。
「とりあえず、入ってよ」
「でも、今」
「いいって。いつもイチャイチャしてるんだから、少しくらいは」
小牧は病室の中まで聞こえるように、声を張った。
ラブシーンも結構だが、外の気配には気付いて欲しい。
そんな当てつけも込めてだ。
案の定、病室に入ると堂上と郁は気まずそうだった。
さっそく冷やかしたいところだが、今日のところは客人優先。
そう考えた小牧は、静かに事の成り行きを見守った。
小牧はドアの外でじっと身を潜めている怪しい2人に声をかけた。
すると2人は揃って唇の前に指を立てて、無言のまま「静かにしろ!」と威圧された。
当麻蔵人の亡命は成功した。
郁が大阪の英国総領事館まで、当麻を送り届けたのだ。
図書隊としては、かなりヒヤヒヤする展開ではあった。
途中当麻と郁は所在がわからなくなり、堂上は被弾したのだから。
だがそれでも何とか作家・当麻蔵人を守ることはできたのだ。
しばらく世間は大いに騒いだ。
連日ニュースとして取り上げられ、テレビをつければどこかで必ず手塚慧が喋っている。
これで世の中が変わる。
一気に劇的には無理だけれど、検閲撤廃への道筋が朧気ながら見え始めたと思う。
図書隊員たちの士気は大いに上がっていた。
そして小牧たちにとって、もう1つの懸案も一気に進んだ。
何年もジレジレしていた堂上と郁が、ついに結ばれたのである!
郁はもう仕事復帰しているが、堂上はまだ病院である。
課業後にいそいそと見舞いに向かう郁は、すっかりお馴染みの光景になった。
小牧は荷物を抱えて、病院に向かっていた。
郁ほどではないが、小牧もまた頻繁に通っている。
理由はもちろん堂上に会いたくて。。。ではない。
入院中の着替えを持っていくためだ。
また汚れ物を持ち帰って、洗濯したりもする。
堂上の病室に行くときは、注意が必要だ。
よく確認せずにドアを開けようものなら、大変なことになる。
何年も想いを拗らせまくって、ようやく結ばれたラブラブバカップル。
そのイチャイチャラブシーンに出くわし、凶悪なピンクオーラにやられてしまうのだ。
だから小牧は病室のかなり前から足音を響かせ、大きくノックをすることにしている。
でもこの日は違った。
堂上の病室の前に、怪しげな2人組が佇んでいたのだ。
小牧は思わず立ち止まり、堂上張りに眉間にシワを寄せた。
一応隊内では堂上の見舞いは特殊部隊の許可を取るようにと、通達してある。
表向きは、堂上がリハビリに専念できるように。
だが実は郁と2人だけの時間を作ってやろうという意図があった。
それでもここは病院であり、実際に中に入ることは容易だ。
だから通達に従わなかった図書隊員が、冷やかしに来たのかと思ったのだ。
だがよくよく目を凝らして、驚いた。
2人組の正体は、図書隊員ではなかったからだ。
それどころか、まさかまさかの良化隊員。
三橋廉と阿部隆也だ。
ラフな私服姿の2人は遠目に見れば、学生のように若々しい。
「何を、してるの?」
小牧が問うなり、2人は申し合わせたように唇の前に指を立てた。
そこで小牧は「なるほど」と頷く。
見舞いに来たものの、病室の中は絶賛ラブシーン中というわけだ。
「悪いね。気を使わせて」
小牧は苦笑しながら、詫びた。
未だに敵対関係の図書隊と良化隊。
だけど少なくても今、この場所では戦闘とは無縁だ。
「とりあえず、入ってよ」
「でも、今」
「いいって。いつもイチャイチャしてるんだから、少しくらいは」
小牧は病室の中まで聞こえるように、声を張った。
ラブシーンも結構だが、外の気配には気付いて欲しい。
そんな当てつけも込めてだ。
案の定、病室に入ると堂上と郁は気まずそうだった。
さっそく冷やかしたいところだが、今日のところは客人優先。
そう考えた小牧は、静かに事の成り行きを見守った。
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