第24話「ジェットコースター」
まるでジェットコースターに乗ってるみたい。
目まぐるしく変わる展開に、郁は完全に動揺していた。
単に大事件が起きたというだけではない。
恋愛初心者の郁にとって、許容オーバーなことが多過ぎた日だった。
正化34年1月15日、郁は朝から緊張していた。
長い間懸案となっていた、堂上とカミツレのお茶を飲みに行くのである。
もしかしたら2人の関係が変わるかもしれない。
そんな純情乙女モード全開で始まったはずだった。
だが平和な時間はあっという間に終わってしまった。
敦賀原発テロだ。
作品に酷似した事件が起こったことで、作家の当麻蔵人が関東図書基地に保護を求めた。
郁と堂上は呼び戻され、デートどころか休日も吹っ飛んだのだ。
ダメだ。切り替えなくちゃ。
堂上との時間を中途半端にぶった切られたものの、郁は必死に切り替えようとした。
1人の作家が葬られようとしている、一大事なのだ。
愛だ恋だと言っている場合ではない!
それなのに、それなのにである。
何とか仕事モードに切り替えた郁に命じられた任務は買い出し。
しかも「堂上とバカップルを装え」と言うのだ。
よりにもよって、現在絶賛片想い中の相手。
いや実際はわかりやすくバリバリに両想いなのだが、郁は知る由もない。
かくして郁は堂上と寄り添って、買い物に出た。
スーパーで一緒に日用品を買い、偽装とはいえ一緒にメガネを選ぶ。
まるでジェットコースターに乗ってるみたい。
目まぐるしく変わる展開に、郁は完全に動揺していた。
仕事に徹しなければいけないのに、恋心は容赦なくAカップの胸を直撃する!
郁はチラリと後方に視線を送ることで、どうにか平静を保った。
2人を尾行しているのであろう、無粋な良化隊の黒スーツ。
皮肉なことにそれを確認することで、気を鎮めることができる。
高鳴る恋心に冷水を浴びせて、今は仕事なのだと言い聞かせるのだ。
レンちゃん。
郁はふといなくなってしまった隊員食堂の青年のことを思った。
当麻蔵人を守るため、決意を固めた図書隊。
でもスパイだったという青年、三橋の母親も同じように図書隊に助けを求めたと聞く。
そしてそれ以外にも、図書隊に保護を求めた作家はいると思う。
だけど全員を守るわけではない、その境目はどこだろう?
作家の「格」によって差をつけているとは思いたくない。
玄田と懇意の折口の紹介だからだとしたら、もっと嫌だ。
「笠原、どうした?」
物思いにふけってしまった郁を、堂上が怪訝そうに呼ぶ。
郁は慌てて「何でもないです」と笑顔を作った。
スーパーでの買い物も終え、後は当麻のメガネを受け取って帰還だ。
とりあえず考え事をしている場合ではない。
目まぐるしく変わる展開に、郁は完全に動揺していた。
単に大事件が起きたというだけではない。
恋愛初心者の郁にとって、許容オーバーなことが多過ぎた日だった。
正化34年1月15日、郁は朝から緊張していた。
長い間懸案となっていた、堂上とカミツレのお茶を飲みに行くのである。
もしかしたら2人の関係が変わるかもしれない。
そんな純情乙女モード全開で始まったはずだった。
だが平和な時間はあっという間に終わってしまった。
敦賀原発テロだ。
作品に酷似した事件が起こったことで、作家の当麻蔵人が関東図書基地に保護を求めた。
郁と堂上は呼び戻され、デートどころか休日も吹っ飛んだのだ。
ダメだ。切り替えなくちゃ。
堂上との時間を中途半端にぶった切られたものの、郁は必死に切り替えようとした。
1人の作家が葬られようとしている、一大事なのだ。
愛だ恋だと言っている場合ではない!
それなのに、それなのにである。
何とか仕事モードに切り替えた郁に命じられた任務は買い出し。
しかも「堂上とバカップルを装え」と言うのだ。
よりにもよって、現在絶賛片想い中の相手。
いや実際はわかりやすくバリバリに両想いなのだが、郁は知る由もない。
かくして郁は堂上と寄り添って、買い物に出た。
スーパーで一緒に日用品を買い、偽装とはいえ一緒にメガネを選ぶ。
まるでジェットコースターに乗ってるみたい。
目まぐるしく変わる展開に、郁は完全に動揺していた。
仕事に徹しなければいけないのに、恋心は容赦なくAカップの胸を直撃する!
郁はチラリと後方に視線を送ることで、どうにか平静を保った。
2人を尾行しているのであろう、無粋な良化隊の黒スーツ。
皮肉なことにそれを確認することで、気を鎮めることができる。
高鳴る恋心に冷水を浴びせて、今は仕事なのだと言い聞かせるのだ。
レンちゃん。
郁はふといなくなってしまった隊員食堂の青年のことを思った。
当麻蔵人を守るため、決意を固めた図書隊。
でもスパイだったという青年、三橋の母親も同じように図書隊に助けを求めたと聞く。
そしてそれ以外にも、図書隊に保護を求めた作家はいると思う。
だけど全員を守るわけではない、その境目はどこだろう?
作家の「格」によって差をつけているとは思いたくない。
玄田と懇意の折口の紹介だからだとしたら、もっと嫌だ。
「笠原、どうした?」
物思いにふけってしまった郁を、堂上が怪訝そうに呼ぶ。
郁は慌てて「何でもないです」と笑顔を作った。
スーパーでの買い物も終え、後は当麻のメガネを受け取って帰還だ。
とりあえず考え事をしている場合ではない。
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