第21話「狙撃」
「ああ、レンちゃんが恋しい。。。」
思わず口からダダ漏れながら、郁は箸を取る。
横から「恋人ですか?」と問われたことで、ようやく口に出していたことに気付いた。
図書特殊部隊は茨城に来ていた。
美術展最優秀作品「自由」を守るためだ。
激しい戦闘が予想され、当然訓練もハードなものになっている。
さらに郁は女子寮の居心地の悪さにも苦しめられていた。
隊員食堂での食事も、業務部が一区切りするタイミングを計らなければならない。
そしてここも関東図書基地と同じように日替わりだが、どうも数量の融通が利かないらしい。
業務部の後では人気のメニューはさっさとなくなり、選べない状況なのだ。
しかも量が少ないし、味もイマイチな気がする。
ああ、レンちゃんのごはんが食べたい。
郁は食事をしながら、いつもそんなことを考えるようになった。
フライはカラッと上がっているし、炒め物はシャキシャキ。
付け合わせの煮物は濃すぎず薄すぎず、いつも絶妙だった。
しかも郁の顔を見ると、いつも二カッと笑いながら大盛りにしてくれる。
「ああ、レンちゃんが恋しい。。。」
「恋人ですか?」
思わず口をついた言葉に、野々宮がすかさず聞いてきた。
茨城の防衛部で頑張っている女性隊員だ。
まずい、どうやら心の声がダダ漏れていたようだ。
郁は苦笑しながら「ううん。関東の隊食のお兄ちゃん」と答えた。
「すっごく美味しいんだよ。レンちゃんのごはん!」
「え、そうなんですか!」
「食べた~い!」
「いつか関東に来ることがあったら、絶対に食べてよ!」
郁のどうでもよい話題に、水戸の女子防衛員たちは食いついた。
厳しい訓練の合間、つかの間の笑い。
まだ残っている業務部員たちの冷やかな視線も、もう気にならなくなった。
「隊員食堂だけじゃないよ。図書館だってここより広いし!」
「武蔵野第一図書館の蔵書数は、日本一ですものね。」
「ぜひ、見たいです!」
「訓練施設も充実してるよ~?」
「そっちはあまり見たくないかも」
ここでまた郁を中心にした女子防衛員たちの輪の中で、笑いが弾けた。
つらいことも多いけれど、まだ笑っていられる。
そして笑っていられれば、強くなれるのだ。
食事を終えて隊員食堂を出た郁たちは、1人の男性とすれ違った。
図書館に真っ直ぐに向かう彼は、おそらく利用者だろう。
それを見た郁はホッとため息をついた。
茨城県立図書館はこのところ利用者の数が減っていると聞いている。
だけどこうしてまだ来てくれる人がいるのだ。
「よし、頑張ろう!」
郁が力強く声を上げると、女子防衛員たちの「はい!」と元気の良い声が帰ってきた。
そして一行は元気よく訓練施設へと向かう。
それは郁の洗濯物に水をかけられる前日のことだった。
思わず口からダダ漏れながら、郁は箸を取る。
横から「恋人ですか?」と問われたことで、ようやく口に出していたことに気付いた。
図書特殊部隊は茨城に来ていた。
美術展最優秀作品「自由」を守るためだ。
激しい戦闘が予想され、当然訓練もハードなものになっている。
さらに郁は女子寮の居心地の悪さにも苦しめられていた。
隊員食堂での食事も、業務部が一区切りするタイミングを計らなければならない。
そしてここも関東図書基地と同じように日替わりだが、どうも数量の融通が利かないらしい。
業務部の後では人気のメニューはさっさとなくなり、選べない状況なのだ。
しかも量が少ないし、味もイマイチな気がする。
ああ、レンちゃんのごはんが食べたい。
郁は食事をしながら、いつもそんなことを考えるようになった。
フライはカラッと上がっているし、炒め物はシャキシャキ。
付け合わせの煮物は濃すぎず薄すぎず、いつも絶妙だった。
しかも郁の顔を見ると、いつも二カッと笑いながら大盛りにしてくれる。
「ああ、レンちゃんが恋しい。。。」
「恋人ですか?」
思わず口をついた言葉に、野々宮がすかさず聞いてきた。
茨城の防衛部で頑張っている女性隊員だ。
まずい、どうやら心の声がダダ漏れていたようだ。
郁は苦笑しながら「ううん。関東の隊食のお兄ちゃん」と答えた。
「すっごく美味しいんだよ。レンちゃんのごはん!」
「え、そうなんですか!」
「食べた~い!」
「いつか関東に来ることがあったら、絶対に食べてよ!」
郁のどうでもよい話題に、水戸の女子防衛員たちは食いついた。
厳しい訓練の合間、つかの間の笑い。
まだ残っている業務部員たちの冷やかな視線も、もう気にならなくなった。
「隊員食堂だけじゃないよ。図書館だってここより広いし!」
「武蔵野第一図書館の蔵書数は、日本一ですものね。」
「ぜひ、見たいです!」
「訓練施設も充実してるよ~?」
「そっちはあまり見たくないかも」
ここでまた郁を中心にした女子防衛員たちの輪の中で、笑いが弾けた。
つらいことも多いけれど、まだ笑っていられる。
そして笑っていられれば、強くなれるのだ。
食事を終えて隊員食堂を出た郁たちは、1人の男性とすれ違った。
図書館に真っ直ぐに向かう彼は、おそらく利用者だろう。
それを見た郁はホッとため息をついた。
茨城県立図書館はこのところ利用者の数が減っていると聞いている。
だけどこうしてまだ来てくれる人がいるのだ。
「よし、頑張ろう!」
郁が力強く声を上げると、女子防衛員たちの「はい!」と元気の良い声が帰ってきた。
そして一行は元気よく訓練施設へと向かう。
それは郁の洗濯物に水をかけられる前日のことだった。
1/5ページ