Instant Battery
ったく、ふざけるなってんだよ!
阿部はイライラとスマートフォンを操作する。
だが無情に呼び出し音が響くだけで、相手が出ることはなかった。
日曜日の早朝、グラウンドにはユニフォーム姿のオッサンたちが集まっている。
阿部隆也もその1人だ。
今日は阿部が所属する草野球チームが、これから試合をする。
ここまで練習はしたが他のチームと対戦するのは初めてであり、みんなが楽しみにしていた。
だが当日、問題が起こった。
試合時間が迫っているのに、投手が現れないのだ。
実は阿部のチームには投手がおらず、長いこと試合ができなかった。
練習ばかりではテンションも上がらない。
そこで阿部が高校時代の先輩に頼んでみたところ、2つ返事で了承してくれたのだ。
だからようやく今日の試合に漕ぎつけたというのに。
寝坊したのか、忘れているのか、投手は現れない。
両チームがウォーミングアップを終えて、あと少しで試合だというのに。
スマホで連絡してみても、まったく応答がないのだ。
阿部は「ったく、ふざけるなってんだよ!」と悪態をつきながら、イライラとスマホを操作する。
だが無情に呼び出し音が響くだけで、相手が出ることはなかった。
どうするんだ?棄権か?
相手チームの主将が、阿部にそう聞いてきた。
その顔に浮かんでいるのは、嘲笑だ。
よりによって投手がいないなんて、間抜けすぎると思っているのだろう。
阿部は悔しさに唇を噛みしめながら「ちょっと待ってくれ」と答えた。
せっかく試合ができるチャンスを失いたくない。
みんな日々仕事をしながら、休日を削って練習を続けてきた野球好きたちなのだ。
なかなかメンバーも集まらず、ヘコんでいた時期もある。
それでも助っ人投手を入れて、試合ができると決まった時には大喜びした。
ここで棄権なんてことになれば、またテンションが下がってしまう。
下手をすればやめてしまう者もいるかもしれない。
ふと思いついた阿部は、スマホでネットを検索した。
そしてとあるサイトを見つけ、書かれていた電話番号に連絡してみる。
それは便利屋のサイトだった。
24時間、なんでもご用命くださいと書いてあったので、思い切ってかけてみたのだ。
もし、もし。
電話の向こうからは明らかに寝起きと思しき男の声が聞こえた。
その瞬間、阿部は「こりゃダメだ」と思った。
咄嗟に切ってしまおうかと思ったが、まぁダメ元で「ピッチャーが欲しいんだけど」と告げた。
電話の相手は「ピ、チャー?」と聞き返してきた。
今から河川敷のグラウンドで草野球の試合があるんだけど、投手が足りないんだ。
できればすぐに来て欲しいんだけど、できる?
阿部はそう聞きながらも、どうしようかと考えていた。
つい今まで寝ていたであろう相手が、投手の手配などできないだろう。
だが相手は「10分、で、行きます」と答えて、電話が切れた。
ハァァ!?
頼んだのはこちらであるにも関わらず、阿部は叫んでいた。
10分で行く?もしかして電話に出たあの寝惚けオトコが来るつもりなのだろうか?
他のポジションならともかく、野球の投手は経験者でないとまずできないと思うのだが。
そうこうしているうちに、グラウンドに1台の自転車が突進してきた。
よく主婦などが買い物に使う、いわゆるママチャリ。
必死の形相で漕いでいるのは、若い男だ
そしてグラウンド横で自転車を倒す勢いで降りると「ピッチャー、来ました!」と叫んだのだった。
すごい寝ぐせ。しかも来てるジャージ、ヨレヨレ。多分起きたままの格好で、着替えてないな。
阿部はものすごい格好で現れ、ハァハァと息を切らしている男を見てため息をついた。
とりあえず球を受けては見るけれど、到底使い物になるとは思えなかった。
阿部はイライラとスマートフォンを操作する。
だが無情に呼び出し音が響くだけで、相手が出ることはなかった。
日曜日の早朝、グラウンドにはユニフォーム姿のオッサンたちが集まっている。
阿部隆也もその1人だ。
今日は阿部が所属する草野球チームが、これから試合をする。
ここまで練習はしたが他のチームと対戦するのは初めてであり、みんなが楽しみにしていた。
だが当日、問題が起こった。
試合時間が迫っているのに、投手が現れないのだ。
実は阿部のチームには投手がおらず、長いこと試合ができなかった。
練習ばかりではテンションも上がらない。
そこで阿部が高校時代の先輩に頼んでみたところ、2つ返事で了承してくれたのだ。
だからようやく今日の試合に漕ぎつけたというのに。
寝坊したのか、忘れているのか、投手は現れない。
両チームがウォーミングアップを終えて、あと少しで試合だというのに。
スマホで連絡してみても、まったく応答がないのだ。
阿部は「ったく、ふざけるなってんだよ!」と悪態をつきながら、イライラとスマホを操作する。
だが無情に呼び出し音が響くだけで、相手が出ることはなかった。
どうするんだ?棄権か?
相手チームの主将が、阿部にそう聞いてきた。
その顔に浮かんでいるのは、嘲笑だ。
よりによって投手がいないなんて、間抜けすぎると思っているのだろう。
阿部は悔しさに唇を噛みしめながら「ちょっと待ってくれ」と答えた。
せっかく試合ができるチャンスを失いたくない。
みんな日々仕事をしながら、休日を削って練習を続けてきた野球好きたちなのだ。
なかなかメンバーも集まらず、ヘコんでいた時期もある。
それでも助っ人投手を入れて、試合ができると決まった時には大喜びした。
ここで棄権なんてことになれば、またテンションが下がってしまう。
下手をすればやめてしまう者もいるかもしれない。
ふと思いついた阿部は、スマホでネットを検索した。
そしてとあるサイトを見つけ、書かれていた電話番号に連絡してみる。
それは便利屋のサイトだった。
24時間、なんでもご用命くださいと書いてあったので、思い切ってかけてみたのだ。
もし、もし。
電話の向こうからは明らかに寝起きと思しき男の声が聞こえた。
その瞬間、阿部は「こりゃダメだ」と思った。
咄嗟に切ってしまおうかと思ったが、まぁダメ元で「ピッチャーが欲しいんだけど」と告げた。
電話の相手は「ピ、チャー?」と聞き返してきた。
今から河川敷のグラウンドで草野球の試合があるんだけど、投手が足りないんだ。
できればすぐに来て欲しいんだけど、できる?
阿部はそう聞きながらも、どうしようかと考えていた。
つい今まで寝ていたであろう相手が、投手の手配などできないだろう。
だが相手は「10分、で、行きます」と答えて、電話が切れた。
ハァァ!?
頼んだのはこちらであるにも関わらず、阿部は叫んでいた。
10分で行く?もしかして電話に出たあの寝惚けオトコが来るつもりなのだろうか?
他のポジションならともかく、野球の投手は経験者でないとまずできないと思うのだが。
そうこうしているうちに、グラウンドに1台の自転車が突進してきた。
よく主婦などが買い物に使う、いわゆるママチャリ。
必死の形相で漕いでいるのは、若い男だ
そしてグラウンド横で自転車を倒す勢いで降りると「ピッチャー、来ました!」と叫んだのだった。
すごい寝ぐせ。しかも来てるジャージ、ヨレヨレ。多分起きたままの格好で、着替えてないな。
阿部はものすごい格好で現れ、ハァハァと息を切らしている男を見てため息をついた。
とりあえず球を受けては見るけれど、到底使い物になるとは思えなかった。
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