ハロウィンの夢

昨日のハロウィンパーティ楽しかったな。
パーティって言っても、皆で差し入れの菓子を食っただけじゃん。
それでも美味かったじゃん。
あのカボチャのお化けの包装紙だとなんかいつもの菓子も特別だよな。

そこは野球部の部室だった。
阿部はそんな会話を、輪の外から見ていた。
正確には会話は聞いていただけ。
阿部が見ていたのは、三橋の頼りない後姿だけだ。

菓子を食べただけのハロウィンパーティ。
だけど三橋は呼ばれなかったのだ。
そして部員たちは会話の振りして、わざと声を大きくして三橋に伝えている。

昨日部員たちで催された小さなパーティ。
でもおまえは呼んでやらなかった。
おまえが来なくて、盛り上がったぞ。
おまえがいなくて、楽しかったぞ。

もうすぐ部活が始まる。
三橋は何も言わずに、輪の横を通り過ぎた。
そして着替えのために自分のロッカーを開けた三橋が動きを止めた。
その背中が小刻みに震えている。

先に着替え終わった他の部員たちが、三橋の後姿に軽蔑したような視線を送る。
「MIHOSHI」と書かれた練習着を着た部員たちと、彼らに囲まれた三橋の小さな後姿。
部員たちが出て行き、取り残された三橋の頬にはポロポロと涙が零れていた。
その視線の先には、自分のロッカーの中に積み上げられた悪意。
部員たちが三橋のロッカーに、パーティの残骸の菓子のパッケージを放り込んだのだ。
歪に丸められたカボチャのお化けのイラストが、三橋を嘲笑うように小さな山になっていた。
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