プレゼント

一番欲しいのは、ガムテープだってよ。
田島に高らかに言われて、オレは阿部と顔を見合わせた。

先日三橋の家で、テストに備えて勉強会をした。
ちょうどその日は三橋の誕生日で、野球部のメンバーは食事を振舞われた。
知らなかったとはいえ、手ぶらで訪問してしまった。
だから皆でお金を出し合って、何かちょっとしたプレゼントでもしないか。
言い出したのは、キャプテンであるオレだった。
他のメンバーで異論を唱える者などいない。

それとなく。あくまでそれとなく。
三橋に何か、欲しいものを聞きだせ。
オレは同じクラスで三橋とは仲のよい田島に指令を下した。

ガムテープ。
かくして一同の期待が託された田島が、聞き出してきた答えがそれだった。
三橋の家にある自作の投球練習用の的に使うのだ。
とにかく投げたがる三橋をすれば、テープはすぐボロボロになる。
だからガムテープはいくらあっても足りないのだという。

誕生日のプレゼントでガムテープ。
それはあまりにも味気ないというか、何か違う気がする。
田島の聞き方が悪かったとか。
そもそも田島にその役をさせたのが、間違いだったとか。
三橋が知らない水面下で、議論が成された。
思いのほかこじれてしまったこの問題は、最後まで予想外の展開を見せた。
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