お酒は二十歳になってから

いただきます!
デジタル時計の表示が23:59から0:00に変わった瞬間。
三橋はプシュと音を立てて缶のフタを開けると、一気にゴクゴクと飲んだ。
完全に出鼻をくじかれた形の阿部は、呆然とその飲みっぷりを眺めるしかなかった。

最近の10代青少年の飲酒事情はどうなのだろう。
コンパなどで当たり前のように飲んでいるのか。
それとも昔より厳しくなったという規制を守り、二十歳まで我慢するのか。

阿部と三橋は、二十歳まで我慢する方を選んだ。
理由は簡単、野球部に所属しているからだ。
高校野球はそういう不祥事には厳しい。
ちょっとした緩みで、下手をすると1シーズン棒に振ることになる。

大学に入ると、コンパだ何だと誘惑の機会は増える。
だがそれも未成年のうちは我慢し続けた。
ここでも野球部に所属しており、羽目を外してチームに迷惑をかけたくない。
それに下手をすれば「西浦高校出身の野球部員」と報じられるかもしれない。
頑張っている後輩たちの汚点になるのも嫌だった。

そして三橋、二十歳の誕生日。
事前に三橋は阿部に、頼みごとをした。
二十歳になったら、お酒を飲んでみたい。
だから付き合って!

阿部としても異論はなかった。
晴れて恋人になった三橋の初めての飲酒。
その場に同席するのは、楽しい思い出になることだろう。

そして5月16日深夜、2人が一緒に暮らすマンション。
阿部と三橋は静かに日付が変わるのを待つ。
そして日付が変わった瞬間、三橋は盛大に飲み始めたのだった。
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