応援歌の不思議

なぁ、どうして野球の応援で「ルパン3世」なの?
田島がふと思いついたようにそう言った。
浜田も泉も三橋もキョトンとしてしまい、言葉が出なかった。

ブラバンも次回は人数も曲目も、もっと増やしてくれるって言ってくれてるし。
チアの子たちも、今からもっといろいろな振り付けを練習しとくって言ってたし。
オレももっと頑張らないとな~♪

9組の野球部3兄弟の前で、熱く語るのは応援団長の浜田だった。
泉は例によって冷めており「ヘイヘイ」と軽くあしらっている。
三橋は「応援、スゴ、い!」と浜田につられるように興奮していた。
そんな中ポツリと疑問を口にしたのが、我らが4番、田島だ。

いや「サウスポー」とか「タッチ」は野球じゃん。
でも「狙い撃ち」もタイトル的に野球の応援に使ってもおかしくねーよ?
あとまぁ「夏祭り」とか夏の歌はまだありなのかなって気もする。
でも「ルパン3世」だけは何でかと思っててさ。
田島は別に浜田を茶化しているわけではなく、本当に不思議だと思っているようだ。

それを言い出したら、キリがないんじゃねぇ?
「ひみつのアッコちゃん」だろ。
「紅」に「海のトリトン」、「宇宙戦艦ヤマト」に「さくらんぼ」に「暴れん坊将軍」だろ。
野球と全然関係ないやつなんて、いくらでもあるぜ。
「アフリカンシンフォニー」なんてもう日本ですらないし。
今度は泉が、指を折って数えながらスラスラと曲名を挙げていく。

意気込みの途中で話の腰を折られた浜田は情けない表情になった。
しかも田島と泉が挙げた曲は、どれも応援で使ったか、これから使いたい曲ばかり。
こんな風に言われたら、これから使いにくくなってしまうではないか。

野球に、関係、なくても、楽しければ、いい、よ!
すっかり意気消沈した浜田に救いの手を差し伸べたのは三橋だった。
そして「いつも、応援、ありがと!」と浜田に満面の笑顔を向けた。
田島が「それもそうか!」と笑い、泉も決まり悪そうに「どーも、な」などと言っている。

そうだな。ありがとな、三橋。
浜田はクシャクシャと三橋の頭を撫でながら、そう言った。
とりあえず選手たちに応援の気持ちは伝わっており、感謝もされている。
それでこそ応援団冥利に尽きるというものだ。

【終】
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