お菓子の日

西浦高校硬式野球部には年に一度「お菓子の日」と呼ばれる日がある。
それは5月の第3月曜日、テスト期間であるため部活は休みだ。
だがなぜかその日、卒業生から大量の菓子が差し入れられるのだ。

部員たちは部室でそれを食べながら、つかの間のおしゃべりを楽しむ。
上級生は下級生に、教師による出題の傾向を教えたりする。
入学したばかりの1年生には、これが大層役に立つ。
またわからない問題を質問する者もいるし、もっぱら野球の話で気分転換するものもいる。
テスト勉強が進んでいる者にとっては、いい息抜きだ。
サボっている者にとっては、頑張らなくてはいけないという刺激になる。
またあまり話したことがない部員などとも話すことがあったりして、チームワーク作りにも悪くない。

テスト中であるので「お菓子会」はきっかり1時間で終了する。
最後に主将が赤点があると部活には参加できないから、しっかり勉強するようにと念を押して解散だ。
そして残ったお菓子を分けて、三々五々解散する。
教室に移動して勉強する者もいれば、誰かの家に集まって勉強する者もいる。
部員たちはこうして入学して、もしくは学年が変わって初めてのテストを乗り切るのだ。

なぜこのような会があるのか、誰も知らない。
かなり昔からの恒例行事なので、その由来を覚えている人間がいないのだ。
もう監督も顧問の教師も最近変わったばかりで、全然何も知らない。
だが部員たちは「お菓子の日」をつらいテスト期間中の息抜きとして楽しんでいた。
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