素麺の懺悔

暑いから簡単に素麺。涼しくていいだろ。
そんなことを言ってたオレは、なんて無知だったんだろう。

大学の野球部の練習中に、三橋が倒れた。
大急ぎで病院に連れて行って、下された診断は熱中症。
オレにしてみりゃ、そりゃそうだって感じだった。

オレたちの大学の野球部はそこそこ強いし、環境はいい方だ。
専用のグラウンドもあるし、立派なブルペンもある。
練習だって効果的に組まれており、暑さなどの天候も当然考慮されている。
普通は熱中症などにはならない。

だが投げるの大好き三橋の場合は、そうはいかない。
とにかく空いた時間にはブルペンで投げている。
何とかレギュラーの座を守りたいのは、オレも三橋も同じ。
球数制限さえ守って無理しなければ、自主トレは悪いことじゃない。
だけど、予想外のこの暑さ。
他の部員より多く体内に蓄積された熱と疲労が、熱中症を引き起こしたのだ。

幸いにも程度は軽いそうで、入院もなくすぐに帰宅できた。
三橋はエアコンで冷やした寝室で、横になっている。
節電も今日だけは勘弁してくれ。
三橋ときたら、顔を真っ赤に火照らせてグッタリしちゃってるし。
しかも食欲がないとか言うんだ。あの三橋が。
そのことだけでも、三橋がいかに重症かがわかるだろう?
1/3ページ