スパイラル2
阿部はいいなぁ、レギュラー安泰だよね。オレなんかヤバいのに。
水谷文貴は少し拗ねた口調で、阿部に言った。
1年7組の教室の休み時間。
阿部は1冊のノートを開いて、それを読んでいた。
勉強のものではなく野球用のもので、日々の練習などを書き留めているらしい。
それを開いて、今日も阿部は準備万端。水谷にはそう見えた。
それに引き換え、と水谷は思う。
年が明けてから、時折見学だと言って入部希望の中学生が現れるようになった。
しかも先週現れたヤツは、外野手だという。
それを聞いて水谷は秘かに焦っていた。
4月になって新入生を迎えたとき、試合に出るレギュラーメンバーはどうなるか。
今の1年生10名を見渡すと、自分がベンチから外れる可能性が高いと思えるのだ。
投手である三橋はまず安泰だろう。
仮に三橋を上回る1年生投手が入ったとしても、投手は何人もいた方がいい。
捕手の阿部はシニア時代に強いチームで正捕手だったのだ。
ここへ来て、下級生にその地位を渡さないだろう。
ではその他の野手は。
4番田島、主将花井がレギュラーを外れるなどありえない。
副主将で内野の要の栄口、打率も守備もいい泉、巣山、左利きの沖だって同じ。
誰よりも3塁コーチに多く入った西広は、試合に出なくても走塁コーチでベンチ入りする可能性が大だ。
だからついついその地位が保証されているように見える阿部にからみたくなったのだ。
阿部が不機嫌そうに「あ~?」と唸ると、ノートから顔を上げた。
ああ、余計なこと言った。また阿部に言い返される、と思った途端。
予想外の人物が「何、言ってるの?」と怒気を含んだ声で言った。
水谷文貴は少し拗ねた口調で、阿部に言った。
1年7組の教室の休み時間。
阿部は1冊のノートを開いて、それを読んでいた。
勉強のものではなく野球用のもので、日々の練習などを書き留めているらしい。
それを開いて、今日も阿部は準備万端。水谷にはそう見えた。
それに引き換え、と水谷は思う。
年が明けてから、時折見学だと言って入部希望の中学生が現れるようになった。
しかも先週現れたヤツは、外野手だという。
それを聞いて水谷は秘かに焦っていた。
4月になって新入生を迎えたとき、試合に出るレギュラーメンバーはどうなるか。
今の1年生10名を見渡すと、自分がベンチから外れる可能性が高いと思えるのだ。
投手である三橋はまず安泰だろう。
仮に三橋を上回る1年生投手が入ったとしても、投手は何人もいた方がいい。
捕手の阿部はシニア時代に強いチームで正捕手だったのだ。
ここへ来て、下級生にその地位を渡さないだろう。
ではその他の野手は。
4番田島、主将花井がレギュラーを外れるなどありえない。
副主将で内野の要の栄口、打率も守備もいい泉、巣山、左利きの沖だって同じ。
誰よりも3塁コーチに多く入った西広は、試合に出なくても走塁コーチでベンチ入りする可能性が大だ。
だからついついその地位が保証されているように見える阿部にからみたくなったのだ。
阿部が不機嫌そうに「あ~?」と唸ると、ノートから顔を上げた。
ああ、余計なこと言った。また阿部に言い返される、と思った途端。
予想外の人物が「何、言ってるの?」と怒気を含んだ声で言った。
1/4ページ