年賀状

クソレフト、何考えてやがる!
阿部は2枚の年賀はがきを見ながら、悪態をついた。

高校を卒業して、大学に進んだ阿部と三橋は都内の賃貸マンションの一室で同居している。
家賃も食費も光熱費も浮くし、1人暮らしだと乱れがちな生活にも規律が保てるだろう。
双方の親も同居すると言ったときには、大賛成してくれた。
だが実は2人は、ただのチームメイトではなく恋人同士だったりする。
2人にとって、この生活は同居と言うよりは同棲だ。
親には後ろめたいような申し訳ないような気もする。
だがやはり好きな人との生活は、嬉しいし楽しい。

そんな阿部と三橋は、年明け早々にそれぞれの実家に帰省した。
そして学校が始まる前日にマンションに戻った2人は、郵便受けに2通のはがきを見つけたのだ。
出かけたのは1月2日だから、届いたのはそれ以降だろう。
差出人はかつてのチームメイト、水谷だ。
おそらくパソコンで、手書き部分は一切なくすべて印刷された2枚のはがき。
並べて見比べてみたが、パッと見たところ同じものだった。

表の宛名面の住所が同じなのは、当たり前だからいいとして。
だが裏面はまったく同じ内容だった。
今年の干支のイラストも「明けましておめでとう」という定番の文句も。
そして「今年もよろしく!」と横に添えられた書かれた文句も、まったく一緒だ。
どんなに見比べても、宛先の名前がそれぞれ阿部と三橋の名になっている以外は違いがなかった。
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