メッセージ
じゃあ次の問題は、三橋。
教師の言葉に三橋の肩がビクリと上がった。
今日は三橋の誕生日。
部員たちはお祝いだと言って、大量のプレゼントをくれた。
手っ取り早く三橋を笑顔にするもの、つまり食べ物だ。
コンビニで売っているパンやお菓子など、安価なそれらは三橋にとっては宝の山。
それらのすべては、三橋の腹におさめられた。
そして当然の結末として、三橋は通常よりも2割増で腹が満たされており、眠気の倍増度はそれ以上だ。
そんな午後の数学の授業、カクンと首が落ちた瞬間に教師に指名されたのだ。
49ページの問3だよ。
隣の席の生徒が小声で教えてくれる。
慌てて立ち上がり、そのページを開いた三橋は瞠目した。
教科書のそのページには、答えが書き込まれていたのだった。
三橋はその内容を読み上げた。
教師が「よし、正解だ」というのを聞いて、着席した。
泉と浜田が「やるじゃん」という顔で三橋の方を見た。
田島はすでに爆睡している。
書き込まれていた答えの文字は、三橋の筆跡ではない。
この字には見覚えがある。
野球部のデータなどで見慣れている阿部の字だ。
ではいつ阿部が三橋の教科書に書き込みをしたのだろうと思い、すぐに思い至った。
午前中に阿部は三橋に数学の教科書を借りに来て、昼休みに返しにきたのだ。
あの阿部が教科書を忘れて借りに来るのは初めてで「あれ?」と思った。
三橋はパラパラと前後のページを見てみた。
今三橋が答えた問題だけではない。
今日の授業でやる範囲の問題全部に答えが書かれていた。
なんで?という問いの答えは、数ページ先の余白に書き込まれたメッセージにあった。
Happy Birthday!!
今日だけは特別。次からは自分で解け。
なるほど、これは阿部からの誕生日のプレゼントだったのだ。
以前、毎週この眠い時間の数学はつらいと、阿部に言ったことがある。
だから今日だけ特別に楽をさせてくれたのだ。
じゃあ次の問題、田島。
教師が今度は田島を氏名した。
慌てて起き上がった田島が「わかりません」答えている。
三橋は自分の教科書を回してあげようかと思ったが、もう無理だった。
ごめんね、田島君と心の中で詫びながら、申し訳ない気持ちとは裏腹にどうしても表情が緩んでしまう。
今日は誕生日。三橋だけの特別。
三橋は教科書に書き込みをする阿部の、ちょっと不機嫌な表情を思い浮かべて、笑った。
【終】
教師の言葉に三橋の肩がビクリと上がった。
今日は三橋の誕生日。
部員たちはお祝いだと言って、大量のプレゼントをくれた。
手っ取り早く三橋を笑顔にするもの、つまり食べ物だ。
コンビニで売っているパンやお菓子など、安価なそれらは三橋にとっては宝の山。
それらのすべては、三橋の腹におさめられた。
そして当然の結末として、三橋は通常よりも2割増で腹が満たされており、眠気の倍増度はそれ以上だ。
そんな午後の数学の授業、カクンと首が落ちた瞬間に教師に指名されたのだ。
49ページの問3だよ。
隣の席の生徒が小声で教えてくれる。
慌てて立ち上がり、そのページを開いた三橋は瞠目した。
教科書のそのページには、答えが書き込まれていたのだった。
三橋はその内容を読み上げた。
教師が「よし、正解だ」というのを聞いて、着席した。
泉と浜田が「やるじゃん」という顔で三橋の方を見た。
田島はすでに爆睡している。
書き込まれていた答えの文字は、三橋の筆跡ではない。
この字には見覚えがある。
野球部のデータなどで見慣れている阿部の字だ。
ではいつ阿部が三橋の教科書に書き込みをしたのだろうと思い、すぐに思い至った。
午前中に阿部は三橋に数学の教科書を借りに来て、昼休みに返しにきたのだ。
あの阿部が教科書を忘れて借りに来るのは初めてで「あれ?」と思った。
三橋はパラパラと前後のページを見てみた。
今三橋が答えた問題だけではない。
今日の授業でやる範囲の問題全部に答えが書かれていた。
なんで?という問いの答えは、数ページ先の余白に書き込まれたメッセージにあった。
Happy Birthday!!
今日だけは特別。次からは自分で解け。
なるほど、これは阿部からの誕生日のプレゼントだったのだ。
以前、毎週この眠い時間の数学はつらいと、阿部に言ったことがある。
だから今日だけ特別に楽をさせてくれたのだ。
じゃあ次の問題、田島。
教師が今度は田島を氏名した。
慌てて起き上がった田島が「わかりません」答えている。
三橋は自分の教科書を回してあげようかと思ったが、もう無理だった。
ごめんね、田島君と心の中で詫びながら、申し訳ない気持ちとは裏腹にどうしても表情が緩んでしまう。
今日は誕生日。三橋だけの特別。
三橋は教科書に書き込みをする阿部の、ちょっと不機嫌な表情を思い浮かべて、笑った。
【終】
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