小さな幸せ物語

綺麗だな。
最後尾を歩いていた三橋は、思わず足を止めた。
そこは小さな教会の前。ちょうど結婚式が終わった直後のようだ。
教会から出てくる新郎新婦を友人たちがライスシャワーで祝っているところだった。

それは練習試合の日の帰り道。
相手校のグラウンドまで遠征していた西浦高校野球部の面々は歩いていた。
専用のバスなど持たないので、帰途は最寄り駅まで徒歩。
そこからは電車で学校へと戻る。

あれ、三橋は?
ん、どこ行った?
三橋のクラスメイトであり、兄貴分である泉と田島の声に阿部は振り返った。
試合は勝ちはしたものの、いろいろと課題もあった。
さて今後の練習にそれをどう反映させようか。
列の先頭を歩く主将トリオ、花井と阿部と栄口はそんな話をしながら列の先頭を歩いていた。

阿部は振り返って、部員たちの顔を見回した。
確かにあの見慣れた大きな茶色の瞳の少年は見えない。
相手校のグラウンドからここまでは、確かに一本道ではない。
だが大きな通り沿いだし、角を2回曲がっただけだ。
どうしてこんな状況で、迷子になれるんだ?
阿部は半ば呆れながら、携帯電話を取り出した。
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