モノローグ2

* Mihashi Side -1- *
季節は秋から冬になろうとしている。
オレたちは相変わらず練習漬けの日々を送っていた。

最近グラウンドでは、ちらほらと下見に来る中学生の姿が見られるようになった。
高校で野球をしたい彼らは、野球部の雰囲気や練習環境を見ていく。
泉君や阿部君がオレも下見に来たよ、懐かしいと笑っていた。
みんな去年のこの時期には、高校でする野球のこと考えていたんだな。
オレはというと、去年の今頃は逃げることばかり考えていた。
三星から逃げて、野球から逃げて、埼玉へ帰ることだけ。
そんなオレが西浦高校で野球をして、毎日こんなに楽しくて。
それでもうすぐ後輩を持つなんて、なんか嘘みたいだ。

そしてオレは今日、部活の前に学校の会議室に向かっていた。
名前を忘れてしまったけど、何かの週刊誌のインタビュー取材だという。
オレたちは何回か取材というのを受けたことはあった。
だが今日はオレ1人だけの取材なのだという。

どうしてだろう。みんなで頑張ったのに、オレだけなんて。
うちのチームはオレよりすごい選手がいっぱいいるのに。
っていうかむしろオレよりダメな選手はいないくらいなのに。
オレは話すのが苦手だし、1人なんて心細い。
出来れば断りたかったけど、阿部君に「お前が認められたんじゃねーか」と言われた。
嬉しそうな阿部君を見たオレは、首を振ることが出来ずに頷いてしまったのだ。

すぐに日付が決まり、志賀先生が場所を手配してくれた。
こんなことがなければ会議室なんて、多分入ることなんてないだろう。
オレは初めて入った会議室で、取材の人と向かい合っていた。

取材の人たちは記者さんと、カメラマンさんの2人だった。
記者さんはモモカンと同じくらいの歳の若い女の人。
カメラマンさんはちょっと畠くんに似たゴツい顔のガッチリした男の人だ。
記者さんがオレの正面に座って、カメラマンさんがオレの写真を何枚か撮る。
カメラのフラッシュが光る中、記者さんがICレコーダーの録音ボタンを押した。
そして挨拶の後、さっそく出された最初の質問にオレは凍りついた。

三橋君は三星学園野球部のことをどう思っていますか?
予想もしなかった質問の内容に、オレはすぐに答えることが出来なかった。
何か変だ。単なる取材じゃない気がする。
やはり1人で取材なんて受けるべきじゃなかった。
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