モノローグ1

* Mihashi Side -1- *
こんなに嬉しくて、いいのかな。
オレは最近、よくそんなことを考える。

西浦高校に入学して、野球部に入部して。
初めての夏の大会が終わった。
けれどももちろんそれが終点じゃない。
オレたちは毎日、練習の日々を送っている。

中学の野球部では、オレは実力もないのに理事の孫というだけでマウンドに居座った。
みんなに嫌われて、憎まれて、それでも毎日投げ続けた。
投げるのがつらくて、でも投げることがやめられなかった。

高校に入って、野球部に入って。
阿部君やみんなと出逢って、オレの生活は一変した。
オレは思ったことを上手く言えないし、何かあればすぐ涙が出てしまう。
そんなオレに、野球部のみんなは暖かく接してくれる。
ドモってても、泣いてても、辛抱強くオレの話を聞いてくれる。
オレみたいなダメピーに、みんなはホントに優しい。

部活はとても楽しい。でも心の奥底にある不安な思いは消えない。
こんなにオレを大事にしてくれるのは、多分オレが投手だから。
10人しかいない野球部で、投手経験者も少ないから。
例えば、田島君とか花井君や沖君がもっと本気で投手を志望したら。
来年、オレよりすごい投手が入部してきたら。
オレはポイっと捨てられてしまうんじゃないだろうか。
それでこの場所を失ったら、オレは生きていけるんだろうか。

だからオレは頑張らなくちゃいけない。
阿部君やみんなに頼らなくても、きちんと何でもできるようにならなくちゃいけない。
みんなに信頼されるいい投手になるために、努力しなくちゃいけないんだ。
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