第7話「ジェネレーションギャップ」

「美味しいですね。」
セナはニコニコと笑いながら、箸を進めている。
郁は「でしょ!?」とまるで自分の手柄であるかのようなドヤ顔だった。

2日目の練習の後、郁はセナと向かい合わせで食事を取った。
別に2人が特別ではない。
初日は何となく図書隊は図書隊、デビルバッツはデビルバッツで固まっていた。
だが今日、合同訓練を行なって、お互いの距離が縮まった。
その結果、食堂のあちこちでおじさんと高校生が入り混じっての食事となったのだった。

「本当に美味しいです。」
セナは味噌汁をズズッと啜りながら、そう言った。
泥門デビルバッツは、食生活という点ではあまり恵まれていない。
合宿などは予算がないので、豪華に食事付きとはいかないことが多いのだ。
マネージャーだったまもりが作ってくれることも多かったが、何せ人数が多い。
品数を多く作る余裕はなく、栄養価まで考えると、カレーやシチュー、野菜のスープが多くなる。
こんな風に主菜と副菜、味噌汁や香の物まで付くような食事にはなかなかあり付けない。

「セナ君はアスリートなのに、小食なんだね。」
「いや郁さんが凄いんですよ。いつもそんなに食べるんですか?」
「うん。でも若い頃に比べたら、全然入らなくなった。」
「え?それで!?」

セナが驚くのも無理はない。
戦闘職種の男たち向けに、ここの食事はボリュームが多い。
だが郁は涼しい顔で「ごはん、大盛り!」とオーダーしていた。
ちなみにセナは普通の盛りのごはんで「おかず少なめ」をチョイスしている。

「セナ君たちって、食事は普段どうしてるの?」
「ボクらはみんな自宅から通っているので、基本はそれぞれのおうち任せですよ。」
「じゃあ食事宣言とかは一切ないんだ。」
「ええ。特にないです。強いて言えばヒル魔さんがプロテインやサプリメントを調達してくれて」
「調達?」
「はい。そういうのは日本よりアメリカのものの方が栄養価?が高いそうで」

セナはそんな話をしながら、かすかに顔をしかめた。
ヒル魔が持ち込むアメリカ製のサプリメントは、日本のものよりも大きくて、飲み込むのが大変なのだ。
セナにとっては毎回苦行なのだが、それも練習の一環と割り切って飲んでいる。

そんな感じで、郁とセナは談笑しながら食事していた。
2人は特に気にすることはなかったが、これが案外食堂内では目立っていたのだ。
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