第5話「その夜」
「あのステップ、どうやるの!?」
勝負の後、郁はセナに詰め寄ってきた。
その勢いに驚いたセナは、知らないうちに後ずさりしていた。
泥門デビルバッツ vs 関東図書特殊部隊。
期せずして勃発したバトルは、結局引き分けだった。
最初の100メートル走は、郁の勝ち。
次のアメフトもどきのミニゲームはセナを含めた泥門の勝ちだったからだ。
だが雰囲気的には、泥門デビルバッツの方が勝ちというイメージが強い。
最初の100メートル走は僅差だったが、ミニゲームは泥門の圧勝だったのだ。
部員たち、特に1年生がテンション高く喜んでいる。
セナは「あまりはしゃがない!」と声を張った。
「アメフトルールに合わせてもらったんだ。すごいハンデをもらっているようなものだからね!」
セナの言葉に、部員たちは落ち着いた。
だが喜びで紅潮する顔は、隠し切れない。
対する特殊部隊の面々は、冷静だった。
こんなイレギュラーな勝負、どこまで予想していたのかはわからない。
だが「なかなか面白かった」「いい見物だったな」などと笑っている。
そんな中、郁はセナに「あのステップ、どうやるの!?」と詰め寄っていた。
その勢いにセナは驚き、思わず後ずさる。
だが郁の真剣な表情に、セナは思い出した。
昨年の夏、アメリカ合宿でのデスマーチの日々を。
戦える武器を手に入れたくて、必死に走り続けた。
郁はセナとは違う。
年齢も性別も、環境も目指すものも。
だが何かを掴みたいと必死になる気持ちは、同じなのだ。
「スピードはそのままで歩幅を変えるんです。それで左右の」
説明しかけたところで、「この、糞チビ!」と怒声が響いた。
言わずと知れたヒル魔である。
「こっちの手の内を明かすんじゃねーよ!」
「別に問題ないじゃないですか。アメフトで対戦するわけでもないんだし」
「企業秘密を安売りすんな!ちゃんと手順を踏みやがれ!」
ヒル魔の言い回しに、セナは「ハァァ」とため息をついた。
セナの走りを郁に教える代わりに、ヒル魔は何か見返りを得ようとしているのだろう。
だから「教えるな」ではなく「安売りするな」と言っているのだ。
「なんか、すみません」
セナは郁にペコリと頭を下げると、後片付けを始めていた部員たちに加わった。
話をブチ切ったのは申し訳ないけれど、セナはヒル魔には逆らえないのだ。
勝負の後、郁はセナに詰め寄ってきた。
その勢いに驚いたセナは、知らないうちに後ずさりしていた。
泥門デビルバッツ vs 関東図書特殊部隊。
期せずして勃発したバトルは、結局引き分けだった。
最初の100メートル走は、郁の勝ち。
次のアメフトもどきのミニゲームはセナを含めた泥門の勝ちだったからだ。
だが雰囲気的には、泥門デビルバッツの方が勝ちというイメージが強い。
最初の100メートル走は僅差だったが、ミニゲームは泥門の圧勝だったのだ。
部員たち、特に1年生がテンション高く喜んでいる。
セナは「あまりはしゃがない!」と声を張った。
「アメフトルールに合わせてもらったんだ。すごいハンデをもらっているようなものだからね!」
セナの言葉に、部員たちは落ち着いた。
だが喜びで紅潮する顔は、隠し切れない。
対する特殊部隊の面々は、冷静だった。
こんなイレギュラーな勝負、どこまで予想していたのかはわからない。
だが「なかなか面白かった」「いい見物だったな」などと笑っている。
そんな中、郁はセナに「あのステップ、どうやるの!?」と詰め寄っていた。
その勢いにセナは驚き、思わず後ずさる。
だが郁の真剣な表情に、セナは思い出した。
昨年の夏、アメリカ合宿でのデスマーチの日々を。
戦える武器を手に入れたくて、必死に走り続けた。
郁はセナとは違う。
年齢も性別も、環境も目指すものも。
だが何かを掴みたいと必死になる気持ちは、同じなのだ。
「スピードはそのままで歩幅を変えるんです。それで左右の」
説明しかけたところで、「この、糞チビ!」と怒声が響いた。
言わずと知れたヒル魔である。
「こっちの手の内を明かすんじゃねーよ!」
「別に問題ないじゃないですか。アメフトで対戦するわけでもないんだし」
「企業秘密を安売りすんな!ちゃんと手順を踏みやがれ!」
ヒル魔の言い回しに、セナは「ハァァ」とため息をついた。
セナの走りを郁に教える代わりに、ヒル魔は何か見返りを得ようとしているのだろう。
だから「教えるな」ではなく「安売りするな」と言っているのだ。
「なんか、すみません」
セナは郁にペコリと頭を下げると、後片付けを始めていた部員たちに加わった。
話をブチ切ったのは申し訳ないけれど、セナはヒル魔には逆らえないのだ。
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