第4話「Set Hut!」
「ぶっ殺せ!」
物騒なセナの掛け声の後「Ya-Ha-!!」と部員が叫ぶ。
円陣を組んだ泥門デビルバッツ、お馴染みの掛け声だ。
図書特殊部隊と泥門デビルバッツの合同訓練初日。
郁とセナは100メートル走の勝負をした。
双方に瞬足がいるから、ちょっとした余興に。
あくまでも表向きはそんな軽いノリだった。
だが実際、どちらも負けず嫌いが揃っている。
勝負と名がつくからには、絶対に負けたくない。
もしも負けるなら、それ相応の対価が必要だ。
なぜ負けたかを知り、それを克服してさらに強くなるための布石にしなければならない。
かくして行われた勝負は、僅差で郁の勝ちだった。
郁としては、意外な結果だった。
いくら種目は郁に有利とはいえ、相手は高校生の現役アスリートなのだ。
だがセナは、というか泥門は負けを予想していたらしい。
その余裕たっぷりな態度が、図書隊側としては気に入らない。
かくしてもう1勝負、今度は相手のルールで戦うことになった。
「本を無事に自分の陣地に届けたら勝ちだ。テメーらにはわかりやすいだろ?」
勝負を仕切るのは、泥門のヒル魔だ。
3年生ですでに引退した前主将だという。
図書隊のオッサンたちを相手に、タメ口と不遜な態度。
だがそれが板についており、誰も咎めるどころか気にしなかった。
ヒル魔が提案したルールはこうだ。
訓練場の一角、アメフトのフィールドの半分弱の広さのスペースを使う。
その南側を図書隊、北側を泥門側の陣地にする。
背嚢に本に見立てた紙束を入れ、それぞれの陣地まで持って行ければ勝ちだ。
アメフトのボールの代わりに、本を運ぶと考えればわかりやすい。
一見泥門に有利なようだが、図書隊にすれば図書の搬入に見立てることができる。
良化隊から逃げながら本を運ぶことを思い出せば、イメージしやすい。
広さの関係もあり、勝負は4対4で行なうことになった。
泥門側はセナと3兄弟こと十文字、黒木、戸叶の4名。
図書隊は堂上班、郁、堂上、小牧、手塚の4名だ。
「ぶっ殺せ!」「Ya-Ha-!!」
円陣を組んだ泥門デビルバッツは、声を上げた。
彼らの試合前の儀式のようなものだ。
それを見た郁は「いいなぁ」と声をあげた。
ああすれば結束が高まり、テンションが上がる気がする。
高校、大学の陸上部時代は個人種目だったので、ああいうことはしたことがない。
図書隊ではせいぜいハイタッチや拳を重ねるくらいがいいところだ。
「ああいうのがやりたければ今度考えるとして、今は勝負に徹しろ」
郁の表情から気持ちを読んだ堂上が、そう言った。
その通り、まずは勝負だ。
郁は両手で頬をパンパンと叩くと、気を引き締めた。
物騒なセナの掛け声の後「Ya-Ha-!!」と部員が叫ぶ。
円陣を組んだ泥門デビルバッツ、お馴染みの掛け声だ。
図書特殊部隊と泥門デビルバッツの合同訓練初日。
郁とセナは100メートル走の勝負をした。
双方に瞬足がいるから、ちょっとした余興に。
あくまでも表向きはそんな軽いノリだった。
だが実際、どちらも負けず嫌いが揃っている。
勝負と名がつくからには、絶対に負けたくない。
もしも負けるなら、それ相応の対価が必要だ。
なぜ負けたかを知り、それを克服してさらに強くなるための布石にしなければならない。
かくして行われた勝負は、僅差で郁の勝ちだった。
郁としては、意外な結果だった。
いくら種目は郁に有利とはいえ、相手は高校生の現役アスリートなのだ。
だがセナは、というか泥門は負けを予想していたらしい。
その余裕たっぷりな態度が、図書隊側としては気に入らない。
かくしてもう1勝負、今度は相手のルールで戦うことになった。
「本を無事に自分の陣地に届けたら勝ちだ。テメーらにはわかりやすいだろ?」
勝負を仕切るのは、泥門のヒル魔だ。
3年生ですでに引退した前主将だという。
図書隊のオッサンたちを相手に、タメ口と不遜な態度。
だがそれが板についており、誰も咎めるどころか気にしなかった。
ヒル魔が提案したルールはこうだ。
訓練場の一角、アメフトのフィールドの半分弱の広さのスペースを使う。
その南側を図書隊、北側を泥門側の陣地にする。
背嚢に本に見立てた紙束を入れ、それぞれの陣地まで持って行ければ勝ちだ。
アメフトのボールの代わりに、本を運ぶと考えればわかりやすい。
一見泥門に有利なようだが、図書隊にすれば図書の搬入に見立てることができる。
良化隊から逃げながら本を運ぶことを思い出せば、イメージしやすい。
広さの関係もあり、勝負は4対4で行なうことになった。
泥門側はセナと3兄弟こと十文字、黒木、戸叶の4名。
図書隊は堂上班、郁、堂上、小牧、手塚の4名だ。
「ぶっ殺せ!」「Ya-Ha-!!」
円陣を組んだ泥門デビルバッツは、声を上げた。
彼らの試合前の儀式のようなものだ。
それを見た郁は「いいなぁ」と声をあげた。
ああすれば結束が高まり、テンションが上がる気がする。
高校、大学の陸上部時代は個人種目だったので、ああいうことはしたことがない。
図書隊ではせいぜいハイタッチや拳を重ねるくらいがいいところだ。
「ああいうのがやりたければ今度考えるとして、今は勝負に徹しろ」
郁の表情から気持ちを読んだ堂上が、そう言った。
その通り、まずは勝負だ。
郁は両手で頬をパンパンと叩くと、気を引き締めた。
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