TV Shopping

それにしてもセナ君、太りましたよね~!
司会役のタレントに話題を振られたセナは「エヘヘ」と笑った。
日本人なら誰でも知っているアイシールド21。
だが今のセナの身体は、全体的にポッチャリと肉が付いていた。

ナショナル・フットボール・リーグ、通称NFL。
アメリカで最上位に位置するプロアメリカンフットボールリーグだ。
長い間、ここに挑戦する日本人はいたが、なかなか本契約にはいたらない。
だがようやくここ数年の間に、何人かの日本人がフルシーズン出場できるほどになった。

小早川瀬那はその中の1人だった。
高校、大学、日本の社会人リーグのXリーグを経て、念願のNFL入り。
本名ではなく、アイシールド21という登録名で活躍した。
その絶大な人気は、単にアメフトファンだけではない。
華麗なプレイからは信じられない可愛らしいビジュアル。
アイドルのように黄色い声援を送る、女性ファンも多かった。

残念ながら実際、セナがNFLでプレイできた期間は短かった。
ランニングバックというポジションは、身体への負担が大きいからだ。
だがセナは満足していた。
出来る努力は全てやった。
選手として完全燃焼できたと思えるからだ。

そして引退し、日本に戻ったセナにはメディア出演のオファーが殺到した。
硬派なスポーツ誌のインタビューや、国営放送のスポーツドキュメンタリーだけではない。
お笑いタレントと一緒に喋ったり、ゲームをするようなバラエティ番組も多かった。
果てはワイドショーのコメンテイターなんてものもあった。

まったくみんな何を考えているんでしょうね。
セナはブツブツと文句を言った。
人前で話すのは、得意ではないのだ。
別にセナでなくても、世の中にはそういうのが大好きな人がたくさんいる。
わざわざセナを出す意味なんて、ないと思うのだが。

それでもセナは、ほぼ全てのオファーを受けた。
ことわったのは収録の日程が重なってしまったものだけだ。
一部のネットなどでは、そんなセナを批判的に見るコメントもあった。
アスリートなのに、テレビとか出過ぎ。
そんなにお金が欲しいのかな、等々。
だがセナは「アメフトがもっと日本でもメジャーになって欲しいから」と言い続けた。
ガラにもなくメディアに露出し続けるのは、アメフトの普及のためと。

アイシールド21、ちょっと太ったんじゃない?
露出が多くなってから2ヶ月もすると、そんなことを言われ始めた。
アスリートとは思えないほどの細身だった、セナの身体。
だが顔やお腹などに、少しずつポッチャリと肉がつき始めたのだ。
そして半年も経つ頃には、テレビなどでツッコまれるようになった。

それにしてもセナ君、太りましたよね~!
共演するタレントやら、スタッフやらによくそんな風に言われた。
セナは曖昧に「エヘヘ」と笑う。
そして「日本は食べ物が美味しいので」とごまかした。

正直言って、弛んだ身体を晒すのは恥ずかしかった
だけどこれも次のステージへの第一歩。
壮大な目標のために、やるしかないのだ。

半年ほどメディアに引っ張りだこだったセナは、そこでバッタリと出演を止めた。
ネットなどでは「太り過ぎたからじゃない?」とか「アイシールド21終わった」などと書かれた。
だがそれも想定内。
出たくもないメディア出演も、太ったと噂されるのもシナリオのうちなのだ。

そしてアイシールド21の名が、完全に忘れ去られた頃。
セナは思いもよらない形で、メディアに再登場を果たすことになるのである。
1/12ページ