モノローグ番外編2

* Sena Side -1- *
あの人が死んだ。
僕を置いて、逝ってしまった。
僕は未だにその事実を、受け入れることができないでいる。

交通事故だった。
彼は道路に飛び出した子供をかばって、飛び込んだ。
そしてそのまま高速で走ってきた車にはねられたのだという。
まるで小説か漫画の中の出来事みたいなお話だ。

知らせを聞いて、病院に駆けつけた僕は、彼の死に目には間に合わなかった。
でも僕よりも一足早く来られたムサシさんと栗田さんから、彼の最期の言葉を聞いた。
彼は命が消えるその瞬間、僕の名前を呼んだのだという。

僕は彼が好きだった。彼に恋をしていた。
だけどこの想いは伝えることなく、死ぬまで隠しておこうと思っていた。
だって同じ男なのだし、気持ち悪いだけだろうから。
だからアメフト選手として、対等でありたいと思った。
こんなにも早く永遠に逢えなくなるなんて、夢にも思っていなかった。

ヒル魔さん、あなたは最期になぜ僕を呼んだの?
どうして僕が来るまで待っててくれなかったの?
何度も何度も、心の中で彼に問いかける。
だが答えてくれる人はもういない、はずなのに。

不意に声が聞こえた。誰かが僕の名前を呼んだ。
でもここは僕の部屋で、ベットに腰掛けている僕以外には誰もいない。
空耳、だよね?
だけどもう一度その声が聞こえた。「セナ」と。
僕はキョロキョロと辺りを見回して、ある場所に気がついた。
壁にかけてある鏡だ。
覗いているのは僕だけど、映っているのは僕じゃない。

ヒル魔さん!?
心の底から驚いた僕は、悲鳴を上げてベットから転がり落ちた。
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