モノローグ3

* Sena Side -1- *
別れましょう。
僕は最愛の恋人にそう告げた。
彼はまったく普段と変わることのない口調で「わかった」と答えた。

僕と恋人であるヒル魔さんは、今は別々の大学に通っている。
なかなか会えない日が続いているけど、毎日メールは欠かせない。
少し寂しいけれど、夢のために頑張るだけだ。

そして今日はヒル魔さんの大学と僕の大学が初めて公式戦で対決した。
やっぱりヒル魔さんの大学、最京大学は強い。
僕ら炎馬大学は、試合の前半にかなりのリードを許してしまった。

だが後半になって猛追し、徐々に点差を縮め始めた。
大量リードからの追い上げは、高校時代に散々やっている。
敵の司令塔であるヒル魔さんがどういう手でくるのか、僕は懸命に考えた。
それに基づいて、こちらは大胆な奇襲を仕掛ける作戦だ。

ヒル魔さんの作戦を読むのは、本当に難しかった。
最初はなかなか当たらなくて、点差がジリジリと広がった。
でも僕は必死にヒル魔さんだったらどうするかって考え続けた。

作戦が当たり始めた時には、背中がゾクゾクした。
何とこの僕たちが、ヒル魔さんの作戦を読んで、その裏をかくんだから!
それは僕にとって、本当に凄まじい興奮をともなう快感だった。
そうして僕たちは少しずつ点差を縮めていった。

だけど試合は結局、最京大学の勝利。
僕たちは追いつくことができず、僅差で敗れた。
残念ながら前半の大差をひっくり返すことができなかったのだ。

でも悔いはない。
今の僕たちには、これが精一杯だ。
来年こそは、きっと。
僕はそんなことを思いながら、相手チームのロッカールームへ向かった。

トーナメント中は敵同士。だからずっと彼に会わなかった。
でも試合は終わったのだから、ここからは恋人同士。
最京大のメンバーは顔見知りが多いし、咎められないだろう。
一刻も早くヒル魔さんを間近に感じたかった。

だけどロッカールームのドアをノックしようとした瞬間。
ヒル魔さんと阿含さんが激しく言い争う声がした。
僕はノックしようとした手を止めて、心ならずもその会話を聞いてしまった。
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