スーパーボウル 5th season

** この作品は2013年のスーパーボウルの試合内容に準じております。**


「レイブンズのペース、ですねぇ。。。」
第2クォーターが終わった瞬間、セナはため息混じりにそう言った。
声色にも少々残念そうな色合いがこもっている。

ヒル魔の自宅の部屋のテレビは、無駄にデカい。
それははっきり言って、1年にたった1回、この日のためと言っても過言でないかもしれない。
今日はシーズンの集大成、スーパーボウルの日。
他の試合はパソコンで慌しくチェックするヒル魔も、スーパーボウルだけは腰を据えて見るのだ。
セナもこうしてその横に座って、迫力満点の大画面で試合を観戦する。

もしかして自分のせいかな。
セナは秘かにそんなことを考える。
事実この壁面を占拠するほど大きなテレビに買い換えたのは去年。
2人だけでテレビ観戦し始めたのも、去年からだ。

だがそれを聞いても、ヒル魔は答えないだろう。
せいぜい「たまたま買い換えるタイミングだった」とでも言うのが、関の山だ。
そもそもこのテレビはどうして手に入れたのだろう。
購入したのか、それとも黒い手帳を使ったのか。

いろいろ考えると、細かい疑問はつきない。
だがセナはあえて追求せず、うやむやなままにしておく。
そうでなければ、ヒル魔という人間と付き合うことは難しい。
真面目な常識人のセナが、ヒル魔の恋人を続ける上でのコツのようなものだ。

今年のカードはAFC覇者ボルティモア・レイブンズ VS NFC覇者サンフランシスコ・49ers。
シーズン前にこの組み合わせを予想した者は、いないのではないかと思う。
レイブンズは2回目のスーパーボウルだし、49ersは18年振り。
どちらも王道の強豪とは言い難いのだ。

試合は第1クォーターを終えたところで7-3、第2クォーターで21-6。
レイブンズの3タッチダウンに対して、49ersはキック2回の6点だけだ。
パスが敵チームの正面に飛んだり、つまらない反則をしたり。
49ersはどうにも波に乗れず、押されているという印象だ。
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