モノローグ1

* Sena Side -1- *
俺と付き合わねぇか。
偽りの告白とわかっていたけど、僕は受け入れた。

入部してからずっとヒル魔さんが好きだった。
ヒル魔さんはあの悪魔のような行動と態度だから皆に恐れられているけれど
整った端整な顔立ちをしているし、立ち居振る舞いも綺麗だし、何よりも実は優しい。
チビで冴えない、足しか取り得がない僕なんかつりあわない。そもそも同じ男だし。
ずっと隠すつもりだった。傍に居られればそれだけでいいと思った。
ヒル魔さんに告白されたのは1ヶ月前。そのときはただ嬉しかった。
僕はヒル魔さんにそっと抱きしめられて、キスをされて。
嬉しくてヒル魔さんの腕の中で僕は涙を流した。

でも付き合う前からわかっていた。僕は気がついていたんだ。
実はヒル魔さんは実は僕のことなんか好きじゃないってこと。
別に卑下しているわけじゃない。恋愛の経験がまったくない僕だけど。
でもさすがに自分に向けられるものが恋愛感情でないことかわかった。
きっと僕の足を手に入れるためにヒル魔さんはこういう手段を取ったんだろう。
多分クリスマスボウルまで限定の偽りの恋。
それでも僕はヒル魔さんがとても好きで。だから気がつかない振りをすることにした。

そしてつきあい始めてわかった。同性を恋人にする場合の最大のネック。
それは男も女も恋敵になるということだ。
まもり姉ちゃんがヒル魔さんとわぁわぁ騒いでいるだけで、憂鬱になる。
栗田さんと昔話をしているだけで、心が騒ぐ。
モン太とパス練習をしているのを見るだけで、胸が痛い。
美人のまもり姉ちゃん、優しい栗田さん、ヒル魔さんのパスが取れるモン太。
それに引き換え足が速いだけの僕。
僕の足が怪我か何かで走れなくなったら捨てられるんだろうな。
そもそもヒル魔さんが欲しいのは小早川瀬那ではなくて、アイシールド21なのだから。

そして食欲がなくなっていく。夜も眠れなくなっていく。
どんどん体調が悪くなっていくのがわかる。
周りに迷惑をかけたくない。何よりもヒル魔さんにウザイやつだと思われたくない。
だから僕は今日も一生懸命笑い、何とか倒れないように過ごさなくてはならない。
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