レーテーの雫ー前編ー
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暗闇の中で吸った煙草の名前が、脳裏にぱっと浮かんでびっくりした。一体どこで嗅いだんだろう、何故知っていたんだろう。
私専用のジャガイモ寝台列車に転がり込んできたおじさんを、何故か不思議に疑う気にならなくて、朝までの短い協定を結んだ。夜明けまでに交代で番をすること。
おじさんに2回目の交代をした後で、夢見心地を揺り起こされた。
「着いたぞ、守衛が順に見回り来てやがる。もう降りたほうがいい。」
「…おはよ。」
寝ぼけて間抜けな返事をすると、おじさんは喉の奥で笑った。なんだか胸が締め付けられるような思いがした。
「じゃ、ここまでだね。」
「ああ、お陰で休めたぜ。達者でな。」
「こちらこそ、無事を祈るよ。」
「ありがとさん。」
まだ夜の気配を濃厚に残した、濃霧の中で相手の顔が見えないまま別れた。
線路の脇の藪を抜けて、道路まで出る。マンホールの蓋を開けて滑り込む。酷い匂いだ。
これから向かうのは、ガビアルという盗賊団の入団テスト。徒党を組むのは趣味じゃないけど、どうしても気になるお宝を彼らが手中に収めている。真っ向から相手取るには大きすぎる相手で、入団するフリをして忍び込んじゃおう、っていうのが、今回の作戦だった。
私はある期間の記憶がすっぽりと抜けている。理由はわからない。
でもそれには、今から向かう一派が一枚噛んでいる気がしてならないのだ。
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