スピンオフ「レーテーの雫」
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かもめはしばらく、ニューロンがどうとか、シナプスが云々とか、辻褄合わせにむにゃむにゃと言い訳がましく推理を連ねていたが、まぁ、要するには、体が覚えていたという一言に尽きるようだ。
「はぁ、でも、恥ずかしい。」
「何が。」
「ルパン達になんて説明すればいいの? あんなに思い出せずに腐心したのに。…言えないよ、えっちしたら思い出したなんて。」
「言わなきゃいい。頭ぶつけたら治ったとでも言っとけ。」
「昔の家電みたいに言わないで。」
不機嫌にシーツに埋もれるかもめを横目に、タバコを思い切り吸い込んで、ぷはっと煙を吐き出した。
「しっかし。」
「なぁに。」
「可愛かったなぁ、お前。」
かもめはわかりやすく頰を染めた。照れると怒るのはこいつの癖だ。今も昔も、俺を忘れた時でさえも変わらない。
「ばか。次元のばか。」
「随分頑張り屋さんだったじゃねぇか。実際どこまで覚えてんだ?記憶失ってた時の記憶ってのは。」
「次元が意気地なしだったから私が頑張ったんじゃない。」
「そういうことにしといてやるよ。いつもあれくらい積極的なら燃えるんだが。」
「…覚えておく。」
「可愛かったなぁ。」
「んもう、うるさい。」
開け放った窓から涼しい風がそよいで来る。体にしみる心地いい疲労感と、隣に感じる温もりに、くつろいだ気持ちで目を閉じた。
「…大介。」
「うん?」
「愛してる。」
額に柔らかく唇が触れる。愛おしさに笑いが溢れた。
「だから、なんで裸の時しか呼べねぇんだよ。」
「だって、初めて下の名前で呼んだ時、こうした時だったから。」
「だったから、何だよ。」
「…思い出しちゃうんだもん。」
かもめは顔を背けたが、耳の赤さで顔色が分かる。
「可愛いね、お前。」
「ばか。」
「好きだぜ。」
「…私も。」
再び体を絡めながら、余韻に浸ろうとしたその時、遠巻きにヘリの音が聞こえてきた。
「…聞こえる?」
「〜ったく、今日は一日中微睡んで居たいところだったのによ。」
案の定、窓の外を覗けば、見慣れた派手なスーツの男が警察のヘリを何十台も引き連れてこちらにやってくるところだった。
「しょうがねぇ奴。」
「あなたの相棒でしょう。」
「かもめ、お前は呆れねぇのか。あいつに引っ張り回される俺に。」
「さてね、そんなあなたを好きになったから。たまに一緒に寝てくれればいいよ。」
着替えながら心地よい軽口を叩いた。
「さて、行くか。」
窓際に立って手を伸ばすと、かもめはその腕を掴んだ。もう二度と離さない。俺の小さな相棒。タイミングを見計らって、ヘリに飛び乗る。
やれやれ、また忙しくなりそうだ。
Fin
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