レーテーの雫ー中編ー
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夢を、見ていた。
私は、いろんな人に騙された。
みんな善人みたいな顔をして、平気で嘘をついた。苦しくて、手を伸ばしても、誰も助けてくれなかった。私は「いい子」と呼ばれた。その言葉に「都合の」って言葉が短縮されていたんだって気付いた時には、もう手遅れだった。体は、動かせば動くし、もう操り人形のように生きてくしかないんだって諦めてた。
死ぬに死ねない生き地獄。真っ暗闇の綱渡りで、足を踏み外した瞬間、暗闇が抱きとめてくれた。
その暗闇は、いろんなものをみせてくれた。本物の自由を、美しい景色を。私の胸にぽっかり空いた穴に、無骨に優しさまで注いでくれた。そして、私の首に繋がれた鎖を壊してくれた。
ねぇ、誰なの?
どうして思い出せないの?
首の周りの傷跡が、焼けるように熱い。
ーー朦朧とする意識の中で、耳障りな声が響く。
「我々の記憶改竄の研究もいよいよフィナーレですね、ボス。」
「ああ、皮肉にも宿敵である奴らがヒントをくれるとはな。」
「記憶改竄に十分なガスを吸わせるには、人体はもろすぎた。それが数年来我々の課題でした。」
「まず予め死に至らない程度にガスを吸わせて、敢えて解毒薬を投与し、体に抗体を作らせる。そして抗体が出来た体で、改めて記憶を破壊する。これで我々の操り人形の完成だ。能力はそのままに、我々の手駒になる。」
「ワクワクしますね。ついに雪辱を晴らす時だ。」
「この実験が成功すれば、我々はこの爆弾ネズミをはじめ、次元大介、ルパン三世、石川五ヱ門、そして峰不二子を手中に納めるだけでなく、あらゆる世界の要人を動かすことができる。世界は、我々のものだ。」
「抗体持ちのサンプルが手に入ったのは好都合でしたね。」
髪を鷲掴みにされて頭を持ち上げられた。口に妙な形のマスクをはめられる。抵抗しようにも、体が重くて動かない。
助けて、助けて。誰か。
もう自由を失うのは嫌だよ。
ここに居たくないよ。
離して、嫌だ。
助けて、
ーーー助けて、次元。
ほんのひと時だけ共に過ごした人なのに、無意識に名前が浮かんだ。
次元、大介。
あの人とは一体どんな思い出があったのだろう。別れ際、今にも泣き出しそうな顔で銃に手をかけた一人の男の顔が忘れられない。走馬灯なんてものがあるのなら、見せて欲しい。私と彼の思い出を。今際の際だけで構わないから。
思い出せなかった。大切なものを。
そしてまた失おうとしている。なくなった記憶の上に建てられた砂のお城。
頰を涙が伝った。そう涙もろいほうじゃないのに、なくなってしまった思い出の空白を撫でる時だけは、どうしても胸がひりひりと痛い。
せめて最後を分かつ言葉が、もっと素敵だったら、こんなに苦しくならずに済んだのに。
バルブを開く耳障りな音がして、私の意識は途切れた。
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夢を、見ていた。
私は、いろんな人に騙された。
みんな善人みたいな顔をして、平気で嘘をついた。苦しくて、手を伸ばしても、誰も助けてくれなかった。私は「いい子」と呼ばれた。その言葉に「都合の」って言葉が短縮されていたんだって気付いた時には、もう手遅れだった。体は、動かせば動くし、もう操り人形のように生きてくしかないんだって諦めてた。
死ぬに死ねない生き地獄。真っ暗闇の綱渡りで、足を踏み外した瞬間、暗闇が抱きとめてくれた。
その暗闇は、いろんなものをみせてくれた。本物の自由を、美しい景色を。私の胸にぽっかり空いた穴に、無骨に優しさまで注いでくれた。そして、私の首に繋がれた鎖を壊してくれた。
ねぇ、誰なの?
どうして思い出せないの?
首の周りの傷跡が、焼けるように熱い。
ーー朦朧とする意識の中で、耳障りな声が響く。
「我々の記憶改竄の研究もいよいよフィナーレですね、ボス。」
「ああ、皮肉にも宿敵である奴らがヒントをくれるとはな。」
「記憶改竄に十分なガスを吸わせるには、人体はもろすぎた。それが数年来我々の課題でした。」
「まず予め死に至らない程度にガスを吸わせて、敢えて解毒薬を投与し、体に抗体を作らせる。そして抗体が出来た体で、改めて記憶を破壊する。これで我々の操り人形の完成だ。能力はそのままに、我々の手駒になる。」
「ワクワクしますね。ついに雪辱を晴らす時だ。」
「この実験が成功すれば、我々はこの爆弾ネズミをはじめ、次元大介、ルパン三世、石川五ヱ門、そして峰不二子を手中に納めるだけでなく、あらゆる世界の要人を動かすことができる。世界は、我々のものだ。」
「抗体持ちのサンプルが手に入ったのは好都合でしたね。」
髪を鷲掴みにされて頭を持ち上げられた。口に妙な形のマスクをはめられる。抵抗しようにも、体が重くて動かない。
助けて、助けて。誰か。
もう自由を失うのは嫌だよ。
ここに居たくないよ。
離して、嫌だ。
助けて、
ーーー助けて、次元。
ほんのひと時だけ共に過ごした人なのに、無意識に名前が浮かんだ。
次元、大介。
あの人とは一体どんな思い出があったのだろう。別れ際、今にも泣き出しそうな顔で銃に手をかけた一人の男の顔が忘れられない。走馬灯なんてものがあるのなら、見せて欲しい。私と彼の思い出を。今際の際だけで構わないから。
思い出せなかった。大切なものを。
そしてまた失おうとしている。なくなった記憶の上に建てられた砂のお城。
頰を涙が伝った。そう涙もろいほうじゃないのに、なくなってしまった思い出の空白を撫でる時だけは、どうしても胸がひりひりと痛い。
せめて最後を分かつ言葉が、もっと素敵だったら、こんなに苦しくならずに済んだのに。
バルブを開く耳障りな音がして、私の意識は途切れた。
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