レーテーの雫ー中編ー
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下に降りて車に乗り込むと、相棒はじっと俺の目を見て、ニヤッと笑った。
「何だよ気色悪い。」
「思い出したんだろ?」
鼻を鳴らして答えると、ルパンは得意げに言った。
「何年お前の相棒やってると思ってくれちゃってんの。」
「昔話は止せ。何かあって来たんだろう。」
「御察しのとおり。昔話に花を咲かせたいとこだけっども、残念ながらあんまり時間がねぇんだわ。いいニュースと悪いニュース、どっちから聞く?」
「いいニュースからだ。」
「お前、かもめちゃんがガビアルに手ひどくやられたのは自分のせいだと思ってんだろ。」
答えに迷っていると、相棒はギアを変えながら続けた。
「ガビアルは昔からかもめちゃんを狙ってたんだ。奴らの専売特許、毒ガス販売の他に、密かに遂行されていた目論見がある。通称『鰐のマリオネット』。裏社会の手練れをお得意の毒ガスで意識を剥奪し、奴らの手中に納めちまおうって計画さ。こういうケミカルな洗脳手口は誰かさんの得意分野だろ。」
「…かもめの知識やデータを元々欲しがってたって? 納得はできるが、慰めにもならねぇ。」
「俺が言いたいのはよ、かもめちゃんは俺たちと同じに危険に生きてるっつうことよ。お前がそれにすんなり納得するとは思ってねぇが。」
医者の言葉を反芻する。
俺が居ることで晒される危険と同じくらい、俺と居ることで守られると言った、あの医者の言葉を。
「…悪いニュースは。」
「かもめちゃんがガビアルに攫われた。今は不二子がマークしてる。」
「クソッタレ。」
ハイスピードにアクセルを踏む。口数が少なくなった俺に、相棒は言う。
「まだ迷ってるのか?」
「あのクソワニの一団をどうやって根絶やしにしてやろうってな。」
「そっちじゃねぇよ、かもめちゃんのことさ。」
「…あいつが居たい場所は、あいつが決めるさ。」
「分かり切ってるじゃねぇか。お前次第だろうに。」
「…どうやってあいつに思い出してもらおうか。」
「そんなの決まってんじゃない。」
「あんだ?」
「いつだって呪いを解くのは王子様の熱いキス。」
「きっしょく悪ぃ。今日のお前一段と酷いぞ。」
「この場合王子様っつうかオジサマだけどな。」
しばらく車を走らせて、相棒はしんみりと言った。
「謝るなよ、次元。」
「…。」
「お前の考えてることは何となくわかるが、」
「あ?」
「謝るなよ。」
「…礼も言わねぇぞ。」
「んなもん要らねぇよ。犬にでも食わしとけ」
***