レーテーの雫ー中編ー
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「ねぇ、次元さん。私たち、本当に、会ったことあるんじゃないかな。失った時間の中で。」
寝起きのベッドの中から、かもめは意を決したように言った。頷くことしかできなかった。一晩、正確には二晩、共に過ごして、忘れた何かが近付いている予感は確信になった。
「共通の知り合いとか、心当たりない?」
***
そういう訳で、アジトに連れ帰って見たわけだ。ドアを開くと、相変わらず腑抜け気味の相棒がいた。
「お、次元。どこいってた…って、かもめちゃん!!!!」
言うが早いか抱きしめる。かもめは悲鳴を上げて飛び退った。逆毛を立てた猫のように警戒している。
「ルパン、コイツを知ってるのか。」
「知ってるも何も…て、えぇ?思い出した訳じゃねぇのか?」
立ち話もなんだというので、コーヒーを淹れて、かもめとの経緯を話す。会話の途中で、伝説には力の及ばないレーテーの雫を見せた。
「いや、力及ばずって訳でもねぇんじゃねぇのかなぁ。」
なにかを俯瞰している風情の大泥棒はため息をついた。
「次元、お前が何かを忘れてる気がするって言った時に、俺が気のせいにしたのはな、他でもねぇ、お前との約束の為なのヨ。」
普段砂糖を使わないルパンだが、今日はやたらとコーヒーに角砂糖を落とした。
「記憶がなくなる前のお前にいくつか頼まれてな。記憶について俺が何を聞いても答えるな、っつーのが、お前自身の願いだったんだよ。だから、悪ィが、俺から二人のことは、何も答えられねぇ。」
近頃ルパンの憂鬱そうな態度は、過去の俺との約束の板挟みだったのだと気づく。
「だが、生きてて安心したぜ、かもめちゃん。」
ルパンはかもめの頭をわしわしと撫でた。かもめはまだ警戒が解けないようで、訝しげに眉を寄せる。感傷に浸っているらしいルパンは、山ほど砂糖を落としたコーヒーを啜った。
「熱ッッ…つうか甘っっ !!」
***