レーテーの雫ー前編ー
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夜中に、喉の渇きで目が覚めた。隣のベッドには、男の人が眠っている。気の緩んだ表情は、何だかあどけない。
記憶上、誰かと同じ部屋で、寛いだ気持ちで眠るのは初めてだ。
ミネラルウォーターのボトルを口につけた。静寂にちゃぷ、と音が響く。
「次元、大介。」
聞いたばかりの名前を繰り返す。口にすれば、何だか懐かしい気がした。私の失われた記憶の中で、会ったことがあるのではという気がしてならない。二人の間のチェストの上の、今日の獲物であるレーテーの雫を手に取った。寝そべって、腕を天井へ伸ばしながら眺める。窓からの月明かりを反射して、息を呑むほど美しい。
「かもめ。」
名付けられたばかりの名前を反芻しながら、宝石を指先で弄んだ。
「かもめ、かもめ。」
何度か繰り返して、名付けられた瞬間の、目の前の男の声が耳の中に響いた。
これ、私の名前だ。
思わず飛び起きた。胸がドキドキしている。これは、紛れも無い。私の名前だ。
レーテーの雫と、胸元の光る石を握りしめた。何故だか涙が溢れてきた。もう少し、もう少しで思い出せそう、なのに。
とっても大事なことなのに、どうしても思い出せない。
空に星座をなぞるように、記憶のかけらを寄せ集めて見るけれど、どうしてもそれは思う形には繋がらない。
口の中で何度も新しい筈の懐かしい名前を呟いた。
忘れたくない。忘れることが怖かった。何かないか、とあたりを見回すと、ホテルに備え付けのボールペンが目に入った。震える手でそれを握り、刻み付けるように腕に書いた。自分の名前と、それからーーー。
腕に書き留めると、ようやく安心した。これで忘れない、忘れてもきっと思い出せる。安心すると、ふっと眠気が訪れた。白んで行く空に、記憶の糸を手繰り寄せながら、眠りに落ちた。結ぼうとした星座の形は、光に溶けてほどけていった。
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夜中に、喉の渇きで目が覚めた。隣のベッドには、男の人が眠っている。気の緩んだ表情は、何だかあどけない。
記憶上、誰かと同じ部屋で、寛いだ気持ちで眠るのは初めてだ。
ミネラルウォーターのボトルを口につけた。静寂にちゃぷ、と音が響く。
「次元、大介。」
聞いたばかりの名前を繰り返す。口にすれば、何だか懐かしい気がした。私の失われた記憶の中で、会ったことがあるのではという気がしてならない。二人の間のチェストの上の、今日の獲物であるレーテーの雫を手に取った。寝そべって、腕を天井へ伸ばしながら眺める。窓からの月明かりを反射して、息を呑むほど美しい。
「かもめ。」
名付けられたばかりの名前を反芻しながら、宝石を指先で弄んだ。
「かもめ、かもめ。」
何度か繰り返して、名付けられた瞬間の、目の前の男の声が耳の中に響いた。
これ、私の名前だ。
思わず飛び起きた。胸がドキドキしている。これは、紛れも無い。私の名前だ。
レーテーの雫と、胸元の光る石を握りしめた。何故だか涙が溢れてきた。もう少し、もう少しで思い出せそう、なのに。
とっても大事なことなのに、どうしても思い出せない。
空に星座をなぞるように、記憶のかけらを寄せ集めて見るけれど、どうしてもそれは思う形には繋がらない。
口の中で何度も新しい筈の懐かしい名前を呟いた。
忘れたくない。忘れることが怖かった。何かないか、とあたりを見回すと、ホテルに備え付けのボールペンが目に入った。震える手でそれを握り、刻み付けるように腕に書いた。自分の名前と、それからーーー。
腕に書き留めると、ようやく安心した。これで忘れない、忘れてもきっと思い出せる。安心すると、ふっと眠気が訪れた。白んで行く空に、記憶の糸を手繰り寄せながら、眠りに落ちた。結ぼうとした星座の形は、光に溶けてほどけていった。
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