ニコチアナの花
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炎を背に歩き出せば、行先に人影が見えた。身構えるが、近づくにつれ、それが見知った男だと気づく。
「五ヱ門。探したぞお前。」
五ヱ門らしい人影は、こちらを向いてじっと動かない。
「もう全部済んじまったよ。村を焼いたのは、あの女領主の遺言だ。」
五ヱ門は何やらぶつぶつと呟いている。様子がおかしい。
「おい、五ヱ門?」
「五ヱ門?誰だそいつは。」
五ヱ門の目は、どこか焦点が合わなかった。つまり、ラリってる。副流煙の効果のほどを思い知るとともに、部の悪さに冷や汗が伝う。
ラリってるとは言え、相手はかの石川五ヱ門で、こちらは眠りネズミを一匹抱えているのだ。とてもじゃないが、応戦できない。太刀打ち出来たところで、峰打ちなんか器用な真似も。
「畜生、やるかやられるか、か。」
腹を決めて腰元の銃に手を当て、薬に侵された五ヱ門が斬りかかってきた、その時。
「随分つ〜めたいじゃないのぉ〜。」
聞き慣れたひょうきんな声と共に、五ヱ門が崩れ落ちた。
「俺様だけ仲間はずれにしてくれちゃって。」
「ルパン!!」
「久しぶりだなぁ、次元?」
倒れた五ヱ門の首筋には、鎮静剤の小さな注射器。
「テメェ、どうやってここに。」
返事の代わりに、ルパンは紙切れをピラピラと振る。鉛筆で黒く塗られたホテルのメモ帳だ。うっすらと白くかもめのクセ字が読み取れる。僅かな筆圧の残りを鉛筆で擦り出したらしい。随分と時代遅れな推理の手を。
「でも結果として俺様が来て助かっただろ?」
倒れた五ヱ門を担ぎ上げながら、古い相棒は言う。
「その顔、どうせまた面倒ごとを持ってきたって顔だな。」
「失敬な〜。お前さん、コレに困ってるって聞いたぜ?いい話があるんだよ。」
ルパンはそう言って人差し指と親指で輪っかを作ってドヤ顔を晒す。
「っは。そいつぁ古い噂だな。コイツのお陰で今やちょっとした小金持ちよ。」
かもめが交渉して手に入れた金と船のことを思う。
「かもめちゃんも立派な悪党になったもんだねェ。」
「おうよ。お前なんかよりよっぽど頼りになるかもな。」
「まぁ相棒の相棒は相棒ってことで、かもめちゃんにも手伝って貰うぜ。」
「また不二子絡みか?」
「あんら、ご名答。流石一番付き合いが長いだけあるねぇ。」
「俺ァ降りるぜ。不二子絡みだとロクなことがねぇ。」
「…っつっても、お前には降りられない理由があんだけどな〜〜。」
「ンなもんねぇよ。」
「胸んとこの内ポケット、探ってみ?」
言われるがまま胸ポケットを探ると、無い。
アレが無い。大事にしまったはずのアレが。
「次元チャン、俺が世紀の大泥棒だってぇの忘れちゃった?」
胸ポケットにしまったはずの物は、大泥棒の手のひらの中だった。
「殺す。」
空いた左手で銃口を突きつければ、いつもの調子で喚いた。
「待て待て待て待て、たっぷり利子付きで返すからよ!」
「気にいらねぇ。」
「ほらほらあんまり騒ぐとかもめちゃんが起きちゃうぜ?こんなに可愛い顔して眠ってんのに。」
どうしようもなく苛立ってケツに蹴りを入れてやった。
元々逃亡するためだけに手配した、二人乗りの小さな船だ。かもめ程度の小柄な女だけならまだしも、いい歳の男が三人。
小さな船は、定員オーバーの重量に加え、憂鬱を乗せて、潮で粘つく水面の上を、とぷりと揺れた。
「五ヱ門。探したぞお前。」
五ヱ門らしい人影は、こちらを向いてじっと動かない。
「もう全部済んじまったよ。村を焼いたのは、あの女領主の遺言だ。」
五ヱ門は何やらぶつぶつと呟いている。様子がおかしい。
「おい、五ヱ門?」
「五ヱ門?誰だそいつは。」
五ヱ門の目は、どこか焦点が合わなかった。つまり、ラリってる。副流煙の効果のほどを思い知るとともに、部の悪さに冷や汗が伝う。
ラリってるとは言え、相手はかの石川五ヱ門で、こちらは眠りネズミを一匹抱えているのだ。とてもじゃないが、応戦できない。太刀打ち出来たところで、峰打ちなんか器用な真似も。
「畜生、やるかやられるか、か。」
腹を決めて腰元の銃に手を当て、薬に侵された五ヱ門が斬りかかってきた、その時。
「随分つ〜めたいじゃないのぉ〜。」
聞き慣れたひょうきんな声と共に、五ヱ門が崩れ落ちた。
「俺様だけ仲間はずれにしてくれちゃって。」
「ルパン!!」
「久しぶりだなぁ、次元?」
倒れた五ヱ門の首筋には、鎮静剤の小さな注射器。
「テメェ、どうやってここに。」
返事の代わりに、ルパンは紙切れをピラピラと振る。鉛筆で黒く塗られたホテルのメモ帳だ。うっすらと白くかもめのクセ字が読み取れる。僅かな筆圧の残りを鉛筆で擦り出したらしい。随分と時代遅れな推理の手を。
「でも結果として俺様が来て助かっただろ?」
倒れた五ヱ門を担ぎ上げながら、古い相棒は言う。
「その顔、どうせまた面倒ごとを持ってきたって顔だな。」
「失敬な〜。お前さん、コレに困ってるって聞いたぜ?いい話があるんだよ。」
ルパンはそう言って人差し指と親指で輪っかを作ってドヤ顔を晒す。
「っは。そいつぁ古い噂だな。コイツのお陰で今やちょっとした小金持ちよ。」
かもめが交渉して手に入れた金と船のことを思う。
「かもめちゃんも立派な悪党になったもんだねェ。」
「おうよ。お前なんかよりよっぽど頼りになるかもな。」
「まぁ相棒の相棒は相棒ってことで、かもめちゃんにも手伝って貰うぜ。」
「また不二子絡みか?」
「あんら、ご名答。流石一番付き合いが長いだけあるねぇ。」
「俺ァ降りるぜ。不二子絡みだとロクなことがねぇ。」
「…っつっても、お前には降りられない理由があんだけどな〜〜。」
「ンなもんねぇよ。」
「胸んとこの内ポケット、探ってみ?」
言われるがまま胸ポケットを探ると、無い。
アレが無い。大事にしまったはずのアレが。
「次元チャン、俺が世紀の大泥棒だってぇの忘れちゃった?」
胸ポケットにしまったはずの物は、大泥棒の手のひらの中だった。
「殺す。」
空いた左手で銃口を突きつければ、いつもの調子で喚いた。
「待て待て待て待て、たっぷり利子付きで返すからよ!」
「気にいらねぇ。」
「ほらほらあんまり騒ぐとかもめちゃんが起きちゃうぜ?こんなに可愛い顔して眠ってんのに。」
どうしようもなく苛立ってケツに蹴りを入れてやった。
元々逃亡するためだけに手配した、二人乗りの小さな船だ。かもめ程度の小柄な女だけならまだしも、いい歳の男が三人。
小さな船は、定員オーバーの重量に加え、憂鬱を乗せて、潮で粘つく水面の上を、とぷりと揺れた。