ニコチアナの花
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控え室前の警備員を気絶させて、制服を拝借する。あとはここからなんとか関係者に扮装して逃げ出せばいい。
かもめが指折り数えていたのは、マスコミや警察が到着するまでの時刻を目算していたかららしい。
「お前のリークは、あの書類だけじゃなかったって訳だな。」
「まぁね。寧ろ、郵送のほうはフェイク。メールは勿論、バッチリネットでも公開しましたとさ。」
「全く抜け目ないよ。お前。」
ちゃっかり口止め料までせしめて来たのだ。小さな舌をチロリと覗かせて、かもめは寂しそうに笑った。
「でも、村の人たちは、助からなかった。」
控え室の奥のカーテンの中で、ゴトリと音がした。マグナムを構え、警戒しつつ様子を伺うと、そこには、美しいドレスを纏った、かつての女領主がいた。
その瞳は廃人のように乾いていて、生気がない。かもめに目で聞くと、首を振って答えた。
「…あんなになったら、もう元には戻れないよ。」
瞬間、その女領主は、目をかっと開いて、小刀を勢いよく突き刺した。
自分の、胸に。
戸惑う俺たちに、その体の養子とは相反する、生気の戻った顔を見せる。
「薬に蝕まれても…強い…痛みがある時は…理性を、保っていられるのだ…。」
その気高い声は、かつて沢山の人間を束ねていたことを伺わせる。
「…我々の部族はもはや終わりだ。理性を持たないケダモノだ。あの男に騙されてしまった。あの毒に、体を蝕まれてしまった。私達は、もう、滅び朽ちていくことしか、できない。」
女が一言発するたびに、ウエディングドレスが赤黒く染まっていく。
「お前たちに、ひとつ、ひとつだけ、頼んで、いいか…?」
***